「ココ(犬)がおかしい。」と、父から電話がかかってきた。
水を飲まない、ご飯を食べない、そして口を触るとものすごい勢いで「キャン!」と鳴くという。
慌てて動物病院に。
すると・・・
「口がものすごく腫れています。局部的なので、食べ物のアレルギー反応か、虫に刺されたか・・・ひょっとしたら蛇に触ったりしたかも・・・とにかく、レントゲンをとります。何かが刺さっているかもしれない。」
「眠らせて、写真をとるしかないですね。」
麻酔と、レントゲンの用意のために席を立った院長先生。
この病院はご夫婦で開業されているのですが、奥様の愛美先生が、その後もじっとココを見つめていました。
口をゆっくり開いて、奥を覗き込む。
「一体何が刺さってるんだろうね~?本当に口がきけたらいいのにね~~。」
目をつぶって患部を触ったり、細い目で一生懸命覗き込む。
そして腕組をする。
人差し指をあごに当てて考える。・・・そしてまた覗き込む。
何分ぐらいそんな動作を繰り返しただろう?
急に表情が変わった。
「院長!違う!輪ゴムだ!」
と叫んだ愛美先生。
院長も飛んで帰ってきた。
すなわち、こういうことでした。
遊んでいるうちに、輪ゴムが口にかかった。
そして、輪ゴムは、ぐいぐいと締め付けて肉に埋没していく。
その上になんと肉ができる。
でも、締め付ける力は残っているので、血がせき止められ「うっ血」していたのだった。
ものすごい腫れ方だった。痛かっただろう。
原因がわかれば、何と簡単な処置か。
輪ゴムを切るだけ(笑)
そして、炎症を抑える注射。
しかし、なんと言っても、執念で輪ゴムを見つけた愛美先生に恐れ入りました!
きっとカウンセリングで風呂敷を広げるように、考えられる事をあげて、そしてレントゲンをとろうとした先生。
でも、果たして肉と一体化した輪ゴムはレントゲンに写るのかな~?
愛美先生の、自分の「想像を越えるもの」?をも受け入れる、その愛に満ちた診察が、小さな小さな輪ゴムの端を見つけてくれたようなそんな気がしたのでした。
ありがとう!愛美先生!