第119話 事は終局へ | 虹のふもとに眠る宝は何だと思う?

虹のふもとに眠る宝は何だと思う?

小説家デビューを目指し地道に執筆活動を続けるyuuma(立花 佑)の日記です。2017年からWebライター始めました&杉山貢大農園のお茶ネット販売&ハーブ畑作り&アルファポリスにて小説掲載中〜!

電波障害を起こしたロマノ研究室のモニターは白紙だけを映していた。

「衝撃波により映像が回復するには今しばらく掛かります」

「召喚獣と「世界の空」は上空で大破したと思われます。有害分子は一万キロメートル上空まで吹き飛ばされ、今のところ地上では確認されません。上昇気流によって成層圏まで昇ってしまえば、アストラルによって浄化されますので安全かと」

「念のため調査機を出動させます」

 生きた心地のしない緊迫状態から解放されたかのように、ロマノ研究員達は安堵の表情を見せ、あちらこちらで小さな歓声が上がった。

 

 この世の終極を迎えたような心境でモニターを見つめている首謀者に、ルチルは銃口を向けたまま、後方で構えていた兵達を呼び寄せた。

「数日中にガディル王子がグレイディウル国王と軍法議長を連れてロマノに赴いてくださる。それまで私が責任を持って貴方方の身柄を拘束する。おそらく今年の全大陸和平評議会に挙げられるだろう。公正な裁きを受けるんだ」

 取り囲んでいた兵士達が速やかにロマノ王と元老議員を拘束した。

事が終局へと導かれていく研究室は慌ただしさを極めていた、そんな中で、ルピナとシリウスに手を繋がれていたリウドが深く深呼吸してようやく目覚めた。


 安堵したのも束の間、二人は我が目を疑うような変化に戦慄し息を呑んだ。 

 リウドの身体は見る見るうちに痩せ細り、顔や手の皮膚に深い皺が刻まれ血管が浮き出た。

 黒髪からは一瞬のうちに色素が抜け落ち、老人のような白髪に変色した。

「何よこれ、リウドが」

「極度の疲労で、老化した」

 朦朧と瞼を開けたリウドだったが、眠るように昏倒してしまった。





* * *

リウドはルチルの邸宅で手厚い看護を受け、一週間後には歩けるまでに体力も回復した。その間ルピナとシリウスは邸宅内の仕事を手伝ったり、街を散策したりして過ごしていた。

 ロマノ城の研究室に入ってから記憶のないロインは自分のした事を悔恨してはいたが、ルチルが根気良くロインを説得し、ベフェナ王には自分が代弁すると言い張った。

ロインはルピナに事の発端を隠していたことに深く陳謝していたが、グランドラインを変えたいというロインの純粋な想いを踏み躙ったロマノ王に対して、怒りを覚えていたルピナはそんな彼を両腕で抱きしめてやった。


「今回の件でグランドラインとインジョリックサークの外交関係が少し変わるかもしれないわね、そうなればロインが願っていた未来に少しは近づくかもしれない。変化を毛嫌いしていた国々もいずれは理解を示してくれるようになるわ」

「そんな短絡的な考えで理想郷は生まれないと思うけど」

まだ身体から気だるさが抜けないリウドは黙然と外の景色を眺めながら、首飾りの輪に嵌められた赤い石を飽きもせず眺め続けているルピナに言い返した。

 

 三人は丸二週間世話になったルチルの邸宅を後にし、ゼノレフ国への国境越え専用の山道ケーブルカーに揺られていた。

「ロマノのやっていた事は確かに卑劣だけど、ロインはそんな子じゃない、救おうとしただけ。近い将来彼が変えるのかもしれないじゃない。正直私もグランドラインが変わる事に反対ではないもの。残すものは残さなきゃいけないけど、それを忘れなければきっと良くなる」


 ふうんと半分聞いていないような返事をするリウドは、黙ってケーブルカーに揺られていた。白髪は光に当たると銀のように艶めいていた。だが痩せ細った頬に、目元の深い窪みと刻み込まれた目尻の皺が、以前のリウドの面影を虚ろにさせてしまうほど露骨なものだった。

「ところで、リウドの老けは治るものなんですか。十日以上経ちましたが、変わった様子はありませんけど」


 窓枠に肘を着いて、同じように景色を眺めていたシリウスが、眠気眼のような細い目を擦りながら訊ねてきた。

「握力はだいぶ戻ってきたぜ、この皺は最後まで残っちまうだろうな」

「でも何で急にラ・バジティスに戻るわけ、ルチルはリウドの身体が戻るまでは居ていいって言ってくれたのに、ザイドだってあの後どうなったのか」

「行けばわかる」

 ケーブルカーを降りてからは長いこと荷馬車に揺られ、ラ・バジティスに着いた頃には夜明けを迎えていた。


 早朝からシェノルは神殿に入り、礼拝堂の長椅子を拭いていた。

「待っていましたよ、皆さん」

 褪せることなく紫紺色の光を放ち続ける玉。三人は祭壇に祈りを捧げ、再会の握手を交わすと、すでに事を悟っているようなシェノルがリウドに向かって頷いた。

「彼の元へ案内しますよ」




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