第107話 閃光 | 虹のふもとに眠る宝は何だと思う?

虹のふもとに眠る宝は何だと思う?

小説家デビューを目指し地道に執筆活動を続けるyuuma(立花 佑)の日記です。2017年からWebライター始めました&杉山貢大農園のお茶ネット販売&ハーブ畑作り&アルファポリスにて小説掲載中〜!

「まあね、でも信じるしかないだろ」

 顔を上げて、止めていた髪を解くと、後頭部まで束ね上げて一つに結った。

 そのあざやかな仕草に、スピカはまた呆然と見とれてしまった。視線を感じたノアが不思議そうな顔をしたので、我に返ったスピカはハッと焦った。


「どうした、ボケっとして、もうすぐディウが作業を終えるぞ、次に移る指揮を」

「あ、はい」

 駆け戻って行くスピカの背中とヴレイの背中が重なって見えた。背格好だけではない、隠れたカリスマ性を秘めているスピカの雰囲気はヴレイとよく似ていて、外見では窺えないスピカの有能さをノアは見抜いていた。だが残念な事に、誰よりもその事実に気付かないのは彼自身であり、それはヴレイにも全く同じことが言えた。


「モテモテだなぁ」

 戻って行くスピカの後姿を眺めていると、スピリッチャーの整備用ケージの梯子を降りて来たイーグルが、ノアの頭上から上機嫌に呟いてきた。

「くだらないこと言ってないで仕事しろ」

 呆れたノアはオペレートデスクに向き直った。

 身軽に梯子から飛び降りたイーグルは、険しい表情で端末モニターに視線を落とした。


「厄介な霧だ。疑っているつもりじゃねえが、理論上マジで破れるもんなのか、一度失敗したら二度目に使える電圧なんて残ってないぞ」

「でも今はこの手しかないの、練り直している時間だってないんだから」

 感情に任せてノアがデスクに手を突いた時、緊急用の船内放送が慌しく流れた。

「緊急事態です。二佐聞こえますか、ディウアースのコントロール神経に乱流数値を測定、このままでは歪みが現われるまで持ちません」

 ノアは反射的に近くの電話を取った。


「電波塔の設置は」

「完了しています」

「電圧も臨界圧力状態です。ライフル装填完了しています」

 ノアの返事を待つコックピットに緊張が走る。

「磁界内の対流で歪を打ち抜けるチャンスは一度しかない」

「それはいつだ」

焦りを見せるイーグルの問い掛けに、ノアは眉根を寄せて答えた。


「ディウアースの稼動限界のラスト三分前に歪が出現する計算だ」

「それじゃ、あいつが持たねえだろ、どうするんだよ」

 解決策の糸口が見つけらずにいたその時、電話口からノアと同行していたリンダ一尉の声が返ってきた。

「先輩、乱流の進行を強制的に遅らせるウイルスを組み上げたんですけど、効果の効き目は今から五分間です、効果が切れると同時に磁界の歪が現れる計算です。どうしますか」

「今はそれでやるしかないわね、今すぐウイルス送信。通信回路をダグネットで繋いで、緊急回線で」

「おいノア、それじゃあ帰りはどうなる、飛行機に妖力を回さなきゃいけないんだぞ」


 急遽変更された作戦を聞いたヴレイは即座に承諾した。

『心配しなくても必ず皆を助ける、それだけだ』

「格好つけちゃって」

クスッとにやけながら受話器を置いたノアだったが、その顔に安堵は現れなかった。それはイーグルも同様だった。

磁界の歪が現れるまでコックピット内は緊張感が張り詰めた。


「後一分でウイルスの効果が切れます」

「磁界の歪は」

「九時方向付近に熱反応を感知しました」

「ウイルス切れます」

 モニタを直視していたスピカは急激の乱流数値の乱れにぎょっとし、思わずイスから立ち上がった。

「シェルトリー二佐っ、艦長が」


「亀裂の熱が射撃可能数値まで上昇、射撃座標をライフルへ送信」

『じゅ、受信を確認、目標を捕捉』

「発射っ」

 稲妻が落ちたような電光石火の眩さは、誰もが一瞬視力を失った。




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