<第6章 完結編>第102話 王女の決起 | 虹のふもとに眠る宝は何だと思う?

虹のふもとに眠る宝は何だと思う?

小説家デビューを目指し地道に執筆活動を続けるyuuma(立花 佑)の日記です。2017年からWebライター始めました&杉山貢大農園のお茶ネット販売&ハーブ畑作り&アルファポリスにて小説掲載中〜!

「さ、私達はこっちでやることが山程ありますよ、ヴレイも向こうで取り組む事は同じです、そう思えば心強いじゃないですか」

 シリウスは撫で落ちたルピナの肩を叩いた。その叩いた肩に力がこもっていたことを察すると、「さあ行こう」と叱咤するようにルピナの背中を押してやった。


 自警団本部に戻ってくると、デュラッセとリューランがエントランスで皆の帰りを待っていた。

 荷物を持って本部の二階から下りて来たルチルは階段下でロインと合流した。荷物を受け取ったロインはエントランスの先で巨大な鳥獣を召喚した。

「じゃあルピナ、僕達はロマノに行くよ」

「ええ、気を付けて」

硬い握手を交わす両者の髪が強い風に靡いた。

ルチルとも握手を交わし、「ロインを頼みます」とルピナは一言付け加えた。決然と頷いたルチルは「お互い健闘を」と囁くように皆へ視線を送った。

 

 二人を乗せた召喚鳥は向かい風の中、力強く飛び去っていった。二回目の見送りにルピナはなんだか切なさを感じた。

「ルピナ王女にお伺いしたい。ロイン王子と話していたことは「世界の空」の事か」

 突然尋ねられたがルピナはいたって冷静だった。

「そうよ、でも悪いのはロインじゃないわ、ロインをたぶらかすロマノよ」

「如何にも、しかしお気持ちは分かるが……」

 渋ったデュラッセにルピナは苛立ちを覚え、鋭い視線を向けた。昂然と構えた瞳は、仲間を見送って虚脱していたとは思えない迫力があった。


「ここで何を疑ってもしょうがないじゃない。ロマノに企みがあるは分かったのよ、だったらこの事をゼノレフ王に知らせてロマノ城を占拠すべきよ、ロマノ王は宰相をほっといて何やっているの」

 憤慨で苛立つルピナを宥めるようにシリウスが冷静に答えた。

「ルピナ、それはおそらく逆でしょう。私見ですがロマノに表と裏があるのなら、ロマノ王は裏を牛耳る隠然な勢力を持っていそうですから」


 剣呑に笑むシリウスを尻目に、リューランはルピナの意見に対して不確定な部分を切り出した。

「しかし軍を派兵させるにはグレイディウル国のリンベル議事堂へ直接出向き、大陸軍法評議長の賛同が必要となる、議長の許可が下りないことにはゼノレフの国軍をロマノへ侵攻させることはできない、許可のない武力行使は反乱軍とみなされてしまう」

「もちろん正統派でやらなきゃ意味ないじゃない、だから陛下が城を離れなくてもガディルが行くのよ、王子でも十分にその権限はあるでしょ、その間に陛下には軍備を整えてもらうの、圧制支援部隊としての出動要請が受理されるまでにね」

 挑戦的な豪語だが今のフレイヤ王女の偉容さからは、普段の陽気なルピナをまるで連想させなかった。


「ルピナ王女の言うとおりだ、これはもう我々だけで動く問題ではない」

 太い眉毛を吊り上げたリューランは、瞼を堅く瞑ったデュラッセを説得するかのように言ったが、眉ひとつ動かさない友人に奥歯を噛み締めた。

「実は私とデュラッセは以前からロマノ政権を握る幹部が怪しいと睨んでいた。そこで宰相の座を退任したルチルにロマノの内偵を協力してもらっていたんだ、あの国は機械化を強化してきている、しかも普通の機械化ではない、インジョリックサークに張り合うほどの力を手に入れようとしている、例えば機械と魔力の融合化などという異常な開発だ」


皆から少し離れた場所で煙を吸っていたリウドが軽く鼻で笑って言い返してきた。

「そんなことができるのかよ、できたとしたってインジョリックの科学を超えられるわけねえじゃねえか」

「そうよ、グランドラインとインジョリックの文明の差は何百年近い差があるのよ、止まった文明の時間を今更動かしたって」

「しかし」とシリウスが言葉を返した。

「ソラの言っていた「世界の空」を使えば可能かもしれませんよ」


「我々は極秘裏に調べを進めルチルと情報を共有しながら、確かな尻尾を掴みつつ、その時を見計らっていた」

 リューランの告白を横で聞いていたデュラッセは、観念したように深呼吸をするとようやく口を開いた。

「今思えば、慎重で冷徹主義だったルチルが今回独断行動に出てくれたおかげで、逆にその期を手繰り寄せることができたわけだ」

「なら確信があるわけでしょ、ロマノが他大陸にまで悪影響を及ぼしかねない、あるいは戦争を起こしかねないと判断されれば、軍法評議会から全大陸和平評議会へ直接報告されるはずよ。デュラッセ、ガディルと一緒にグレイディウルに行って評議長に伝えて、インジョリックの軍も動いている、もう時間がない気がするの」

 ルピナは胸の上で、ヴレイに貰った首飾りを強く握りしめた。

 すでにデュラッセの意志は、精悍な顔付きで見上げてくるルピナと同じ気持ちになっていた。


「確かに、軍法評議会へ事を訴えられれば、議会で公正な制裁を下してもらえる、分かった承知しよう、責任持って評議会に伝える、だがルピナ王女をここに残して城へ戻ることはできない、護衛を任されている以上、一緒に城へお戻りくださらないと」

「それはできないわ、私はロマノに行く、ロインが心配なの」

 


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