夜になって村は煌びやかに浮かび上がった。
村を三区に分け、一区に一台ずつの四輪山車を引きながら区内を練り歩く。
派手に金銀を装飾された山車には村の子供達が行儀よく座り、小太鼓を叩き、お囃子を奏でている。
二日目までは区内を引き回り、三日目に中央通りに三台が集まるといった具合だった。
自警団本部でシリウスの試験結果を聞き、夜も待たずに露店の酒場で祝賀会を開いた。デュラッセとリューランも呼び、人でごった返している狭い店内で大人六人が卓を囲むと、益々熱気がこもって暑苦しくなった。
席を確保するなりルピナはカメラを持っていた観光客を呼び止め、場に落ち着いている暇もなく唐突にカメラのフラッシュが光った。
仕切りたがるルピナがシリウスのために乾杯の音頭を取ると、炭酸の泡が噴きあがったように、盛大にシリウスの合格を祝った。決して広くのない円卓を埋め尽くす料理と酒が会話を異常なほど弾ませた。
数時間かしてデュラッセとリューランは自警団本部に戻って行った。四人になってからも場の熱は冷めそうもなかった。かなり夜が更けてから、まだ疲れの残るシリウスはリウドに付き添われ宿に帰って行った。
三台の山車が広場に集まると村人達は山車を囲み、太鼓のリズムに合わせて踊り始めた。
手をヒラヒラと頭の上で返しながら、千鳥足で踊るのがこの祭典の形式らしい。頬を赤くしたルピナは昂揚して飄々とした足取りで踊り始めたので、心配するヴレイも仕方なく輪の中に入った。
無邪気に笑うルピナから目を離すことなくヴレイも恥ずかしがりながら見真似で、村人達や観光客と交じって踊った。
そのうちに千鳥足が酔っ払いのよろめき姿に変わっていたので、ヴレイはルピナの手を取って広場を出ると、祭りの様子をただ静かに見守っていた街路樹の脇に腰を下ろした。
「少しここで酔い醒ませ」
ルピナの頬はさらに赤みを増し、目も虚ろになっていた。
ルピナを座らせてから、少し距離を置いた隣にヴレイは腰を下ろした。
「まだ怒ってる?」
お囃子や小太鼓の音色が祭りの騒ぎ声と一緒に流れてくる。愉快な笑い声が合唱のように響いていた。
「始めから怒ってないわよ」
「怒ってたよ、無茶苦茶なこと言うし」
苦笑いを滲ませながらヴレイは天を仰いだが、見えたのは夜風に吹かれる青葉だった。
「できることならザイドの件が片付いてから帰りたかった、ごめんな、色々振り回して」
「なんで謝るのよ、他人でもないのに」
まだ酔っているのかルピナの口調は怒りながらも弾んでいた。
また「ごめん」と言いそうになって、言葉を飲み込むとヴレイは何も言えなくなってしまった。
「少し落ち着いたら宿に戻ろう」と告げると、コクリと頷いたルピナの頭が肩に乗った。ふわっと野花の香りがして、ヴレイは肩に力が入った。
無理にどかすこともできず、しばらくそのままじっと耐えた。祭りの明かりがぼんやり浮かんで光景が夢幻のように揺らいでいた。
「帰ってきて」
消え入りそうに呟いたルピナの声を、聞き逃さなかったヴレイは「うん」と答えて、肩から伝わる体温を感じながら瞼をとじた。
しばらくしてからポツリとルピナが口を開いた。
「明日、ロインのところに行くわ」
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