第84話 消えた偵察機 | 虹のふもとに眠る宝は何だと思う?

虹のふもとに眠る宝は何だと思う?

小説家デビューを目指し地道に執筆活動を続けるyuuma(立花 佑)の日記です。2017年からWebライター始めました&杉山貢大農園のお茶ネット販売&ハーブ畑作り&アルファポリスにて小説掲載中〜!

調査を開始してから十二時間が経った頃、異変は突然起きた。

コックピット内は情報収集に追われ右往左往と乗組員が駆け回る。辺りを覆っていた霧が突如牙をむいて豹変したのだ。


「どうして、なぜスピリッチャー隊が消えるんですか、情報開示はまだですか」

「スピカ落ち着いて、状況はすぐ解る」

 ノアはオペレーターの端末モニターを覗き込む。

「このデータをスピカのデスクへ送って」

「はい」

 指示を仰いだのノアは階下のブリッジから階段を駆け上がると、そのままスピカのデスクへ飛び込み、キーボードを操作した。


「この霧は微量ながら電子を帯びている。スピリッチャーが消えたのはこの霧が作り出した電磁界の影響とも考えられる、でも磁界だけで船が消える事は科学的に考えにくい、もしあの要塞から人工的に発生しているものなら、空間をねじる何かがこの電子に含まれている、私見だけど」

「だとしたらあの要塞の所有者は余所者を近づけまいとしているって事ではないでしょうか」


「さすが艦長、さしずめ何かを隠しているか邪魔をされたくないのかですね、じゃなかったらわざわざ境界海域に潜伏しませんって、にしても一帯何を」

 言い切ったハリだったが顎に手を付いたままやはり考え込んでしまった。

 解決策が見当たらないまま端末を凝視していると、オペレーターからの報告にスピカはスッと顔を上げた。

「本部より入電、モニターに回します」


 前方の中央モニターにスカイ副司令官が映し出された。

「つい先ほど、第一艦隊から緊急信号が本部に届いた。ダグ信号はスピリッチャーの救難信号を示している、何故即座に連絡しなかった」

 ノアは唇を噛んで答えた。

「申し訳ございません、レーダーからスピリッチャーが消失した瞬間、電波障害が起き連絡が行き届かず……」

「言い訳はいい、消えた原因は何だ、ハッキングか」


「いえ、それはないと思われます。グランドラインにそこまでの技術はありません、ダグ防御壁を破られた形跡もありません。可能性としては辺り一帯を覆う霧が原因かと思われます。スピリッチャーが調査していた辺りの霧は特に密度が濃く、微量ながら霧の粒子と混じって電子が検出されました。そこから考えると何らかの仕掛けで歪んだ磁界がスピリッチャーを消したのが原因かと考えています」

「それで救出作戦は何かあるか」


「まだ分析段階ですが、歪んだ磁界によって消息を絶ったスピリッチャーは肉眼では確認できない狭間らしき空間に、固定された形になっていると思われます。ですからレーダーで捕捉できなくても、我々と同じ空間にいると仮定できます。あくまで理論上ですが」

声を張り上げているわけではないがノアの声色は怜悧でよく透る。一呼吸おき、再び不確定な説明を続行しようとしたその時、階下のオペレーターが突然マイクに向かって声を上げた。


「ウイルス侵入、第一艦隊の第三ダグシステムにウイルスが見つかりました。バージョンを変えながら各エリアの防壁を突破、ダグ中枢に進行しています」

「ウイルスはダグコードを解読し侵食を続けています。防壁の効果なくなりました。完全侵食まで約三時間。第三システムから第二システムに進行しています」


 通信モニターに映る副指令は険しい表情を見せ、苛立ちを込めて言った。

「早急にウイルスの出所を調べろ、このまま回線を切るんじゃない、常に本部の発令所と繋いでおけ」

「了解しました副指令。リンダ、急いで迎撃ワクチンを作って、対抗防壁でもいいわ」

「はいっ」

 まだ年の若い作戦部の一尉はオペレーターのデスクに着いて作業に取り掛かった。


「彼女の専門って」

 あまりの手際の良さにスピカは瞬きも忘れている。

「ハッキングやダグ防壁の組み上げとコンピューターウイルス除去が専門、その腕だけで言えば一佐より上だ。ハリ、ダグ稼働率のレベルを下げろ、ランダムに暗号を変えて中枢には侵入させないで」

「了解。ウイルスの進行が遅くなりました、完全侵食まで約六時間」

 

 その時、イーグルが息を切らしてブリッジに駆け付けて来た。

「ウイルス侵入ってどいうことだ、防壁を張っていたんじゃないのか」

 半分怒りを露にしたイーグルは鋭い双眸をスピカに向けた。視線に気付いたノアがスピカの背を押して自席に座らせた。

「おい、どうなってるんだ、偵察機が消えたんだぞ」

「分かってるっ」




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