ごきげんよう、百合喫茶Le Lis(ルリス)です。

 

当グループでは百合をコンセプトとしたカフェを不定期に開催しております。

第二回開催決定!2019年12月1日(日)池袋にて開催いたします。

第二回開催は聖ルリス病院を舞台に「社会人百合」をお届けいたします。

ご予約は終了しましたが、当日席のご用意がございますので、お時間のある方は是非各枠開始時間に会場までお越しくださいませ。

 

本日は定時後の椿とあんずのお話です。

 

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「ちゃんと家に帰り着いてよ?」

「大丈夫だいじょ~ぶ!お疲れ様っ

ほんとうにありがとぉお!」

 

二人して結構飲んだはずなのに、足取りのしっかりしている椿に大きく手を振るとあんずは帰路につく。

風が吹くと思わず身震いするような気温に、もう冬なのだと嫌でも気付かされる。

(あと少しで…記念日だったのになぁ。)

目撃したものは幻などではなくて、悲しくてどうしていいかわからなかった。けれど事実を問いただす覚悟も、だからといって別れを切り出す勇気も、あんずにはなかった。

 

『今日はご飯食べて帰ります。遅くなるから先に休んでください。』

『わかった』

スマートフォンを見ると、業務連絡のように淡々と送ったメッセージに短い返事が返ってきていた。

 

 

―― 恋愛とか、好きとか、私にはよくわからない。

高校生の頃には周りが愛だの恋だの騒いでいたけれど、それがどんなものなのかよくわからないまま大人になってしまった。

職場で出会った翡翠さんはしっかりしていて、厳しいけど温かくて、私にだけ見せる甘い笑顔にドキドキした。だけど「好き」と言われても同じ言葉を返してあげられなくて…「側にいるだけでいい」と言った翡翠さんの優しさと居心地の良さに甘えていた。

一緒に暮らして、同じ空間にいるのが当たり前になってしまったから、いつの間にか理解していた自分の中の気持ちを、恥ずかしくて彼女に告げずにいままで来てしまったのだ。

 

「私、ずるいよね」

外の空気ですっかり酔いのさめてしまった頭でぐるぐると考える。

椿は酒の入ったグラスを傾けながら、ただ黙って話を聞き、『きちんと話し合いなさい』と背中を押してくれた。

おかげで大分整理がついたけれど、それでもやはり…本心を聞くのは心が痛む。

 

歩いてすぐの、二人で暮らす家。夜道からでもわかる私たちの家の明かり。

あんずは小さく頷くと鍵を握りしめてエントランスに入っていった。

 

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続きのお話はまた今度。

 

それではまた、ごきげんようおすましスワンまじかるクラウン乙女のトキメキ