とうとう私は親知らずに手を掛けました。

忘れもしない25歳の秋。
私は職場の有る築地の歯医者で、この親知らずは抜いた方が良いと言われた。
『聖路加病院に紹介状書いてあげるから』
真横に生えてる私の親知らず。
『ちょっと歯茎を切って、抜くだけだから』
痛くもないのに、何故そんな事をしなくちゃいけないのかと、想像しただけで痛そうだったので、程無くして職場を辞め、親知らずの事は聞かなかった事にした。

その8年後、私は横浜で結婚。
不妊治療の一環で、歯の治療はキチンとしておいた方が良いとの事で、久々の歯医者へ行ったのだ。
家の近辺は病院が多い。
家から徒歩30秒の歯医者へ行った。
ニコリともしない40代のナイスミドルの先生に言われた。
「この親知らずは抜いた方が良いね。市大病院へ紹介状書くから。あなたの親知らず、真横に生えていて、神経に沿って生えているから、顎の骨を切って抜くと思うよ」
アゴノホネヲキル
え?何その呪文。んなこと出来る訳ないじゃん。
無駄に創造力が発達してる私は、恐怖におののいた。
そして、私は逃げるように、その歯医者に通う事を辞め、その反対側にある、オレンジと白の外観の、ニコチャンマークが大きく描かれた看板で、どこからどう見ても、優しそうな歯医者へ行く。

今すぐ処置しなきゃいけない親知らずな訳が無い。
と、完全なる現実逃避をしていたのだ。

疲れてくると、左の歯が痛み、顎が痛み、激しい頭痛に見舞われていた当時の私。
原因は、この親知らずかもしれないと、築地の歯医者の、うっすらとした記憶が蘇る。

そして、そのポップな看板の歯医者でも、同じ事を言われる事になる。

前回のナイスミドルとは違い、ちょいポチャの、色の白い、小さな声のおどおどした態度の先生。
『これは抜いた方が良いです。。大掛かりな手術になるので、紹介状を書くので、市大へ行って手術をして下さい』
と?小さなボソボソした声で言われる。
どいつもこいつも紹介状紹介状って!
何さみんな!
と、恐怖に弱い私は信じたくなかったが、市大病院の口腔外科へ、紹介状を握りしめて、話を聞きに行く事にした。
歯が、、、痛いし。。

2週間後、市大病院口腔外科を受診。
チャラそうなニヤニヤした顔の若い医者は、CTを眺めて言う。
『あぁ~、これは抜いた方が良いですね!右も左も顎の骨に埋まってるし、神経に沿っているから、2泊3日の入院で、やっちゃいましょう。顎の骨をちょっと切るだけだから。この神経は、下唇と舌の神経で、手術する部位的に、触れない手術は出来ないから、麻痺が残るかもしれませんね。半年で治る人も居るし、1年で治る人も居るし、一生残る人も居るし。個人差ですね~。でも、抜いた方が良いのでね。はい、この同意書、読んだらサインしてね♪

何故そんなにサラッと言えるんだ?

私の頭は「アゴノホネヲキル」「イッショウマヒガノコルカモシレナイ」
という呪文で頭が一杯だ。

それが今年の5月の話。
結局、周りの反対もあり、手術を受けるのをや
めた。
そして、横浜市内の海のあるエリアへ、この秋に引っ越しをした。
引っ越し早々、またしても左の歯が痛み出した。
ああ、逃げ回るのも、もう限界なのかもしれないな、と思い、ジンジンする左顎を擦りながら近所の歯医者へ。
奥の歯と歯茎の間に大きなポッケが出来ており、小さな器具で、そのポッケの間から、コンコン、と親知らずを叩かれた。
「ああ、これは、手術して抜いた方が良いです。ほっといても直る物じゃないですね。腹を決める時が来たんじゃないかな。はい、紹介状。」
数々の親知らずの痛みと歯医者と対峙してきたけれど、1度は逃げた市大病院口腔外科へ、またしても紹介状を書かれてしまった。

もう、やるしかないのか。
顎の骨を切って、神経を傷付けて、麻痺が残っても、やるしかないんだな。
歯医者って怖くて行きたくなかったけど、やっぱり歯医者は皆おなじ。
これだけ回ったんだから、やはりやるしないのか、と諦めたのです。

続く






めちゃくちゃ気持ち良い!

チャーリーくん、4時半に起こしてくれてありがとう😂