まゆ隠れ蓑日記 -23ページ目

カズコさんは、結果として病院へ行く事が出来ました。では、何故、一年も病院へ行けなかったんでしょう。

ヘルパー事務所の方たちは、カズコさんに関わる様になって一年半。彼女の事を本当の意味で知ろうとしていたのでしょうか。一年半も有れば、信頼関係を築く時間は、たっぷりあったと思うのです。

その答えは、カズコさん本人が教えてくれています。

週1しか会わない私でさえ、聞く事が出来たのに、一年半関わっているケアマネさんやヘルパーさんが、聞けなかった事は無いと思うのです。

聞こうとしなかったんじゃないのでしょうか。

一人で出来る。忘れてしまっていってるのは薄々感じている。だから火を使わない様にしている。あそこのバァさん火の不始末で死んだとか言われたくない。出来る事は、やっていかないと頭がボケてくる。自分で出来る事は自分で、やっていたい。娘には迷惑を掛けたくない。

大学を出て、働いて働いて娘を薬剤師にした。(彼女自身も聡明で博識な方)

お孫さんの事など、自分の今の気持ちや、こう生きていたい。など、御本人が話してくれている。

薬を飲み忘れる事は幾度となく有るけれど、それって重要かな?訪看さんとか来ているし、ご近所付き合いも有って、顔を出さないと近所の方が心配して来訪してくれるそうな。それはカズコさんの財産で、気に掛けてくれる人達が、カズコさんの環境に有る。そのうえで、彼女の自尊心を守る。

それでも今回の定期的な受診の様な必要性がある時は、逆に彼女の自尊心をくすぐる。出来ると思ってるから話をしますね、とか。ボケたフリしないで、とも言ってたかな(笑)私的には、どっちでも良いんだけどね。ボケてようがボケてまいが。

生きている存在自体が、情報の宝庫なので、いくらでも本人を見れば本人と話せば、人生の履歴を知る事が出来る。

その役割が介護の専門職の仕事だと思うんだけど。

認知が入ってる所と入ってない所が有るんですよね。

この言葉を専門職が言ってる事が、プロ意識の無さというか、自分は人を見る事が出来ない無知な専門職です、と言っている様に聞こえた。認知症の事、理解しているのかな。

相手にしているのは、生きている人間だ。

それ以上でもそれ以下でも無い。

ボケて忘れてしまったら、人間として扱わないのか?自分が、されたらどう思う?

そんな事、教科書に書いてないから勉強しないのかな。

私の仕事は、認知症の症状のある、ばばちゃん達の側に居させて貰う事。話を聞かせて貰う事。お互い困っている事を助け合って過ごさせて貰う事。それだけ。

まだまだ、ばばちゃん達との面白いやり取りを、事例を含めて紹介していきます。
























そして、次の土曜、カズコさんちへ行った。


「カズコさん、先週お話したように、今日はコレ終わったら、○○医院に行くんですよ〜」

『それなんだけど、娘から、今日一緒に出掛けようって言われて、病院行けなくなっちゃったんだよ〜』

(その場しのぎのウソ)

「ああ!そうだったの?でも娘さんから頼まれたのに、おかしいな〜。カズコさん、娘さんに電話で確認して貰っても良いですか?私、娘さんの連絡先知らないんですよ。ケアマネさん経由で頼まれただけだからさ。」

『分かったよ。今掛けるね。

あ、もしもし?今日出掛けるんだよね?え?病院に行くの?私が?そうなの。。。』

娘さんは、今日私と病院に行く事は、ヘルパー事務所から伝えて貰っているので、娘さんからも話をしてくれたようだ。

娘さんは薬剤師で、40年以上掛かりつけの病院の隣の薬局に娘さんは勤めていたので、病院の院長先生とは長年の付き合いなのだそう。(本人談)

それを今までのお掃除の時間に30回は聞かされたので、その情報を使う事にした私。

『アンタが出たら、ワタシ一人で病院行くから。掃除終わったら帰っていいよ。まあ、ワタシ、今日調子悪いから来週にするかもしれないけどね。』

「大丈夫ですか?!そしたらさ、一応、カズコさんと行くって、先生とお約束しちゃったから、電話掛けて断って貰っても良いですか?私も難儀な仕事で、確認だけしなきゃいけなくてさ。カズコさんと行くって言っちゃったからさ。。でも、何十年と御世話になってる先生とのお約束を当日にお断りの電話掛けて、先生、心配しちゃうね。娘さんも御世話になった先生なんでしょ?」

『そうだよ〜。もう40年以上!娘も御世話になったんだよ!』

「そっかー。先生、カズコさんに、1年会ってないから心配みたいだよ。今日、顔だけでも出してあげたら?11時半に約束してるからさ。ほら、今、11時前だし、今から行けば間に合うんじゃないかな。」

『いんだよ。一人で行けるから、アンタ帰んな!』

「帰るよ。私は次もあるからね。カズコさん、病院に行きたくない理由とか、あるの?」

ここまでのやり取りは、本人から何度か聞いた事ある話もあって、初めて私は病院について聞いてみた。頑なに病院に行かない理由が有るのかな、と。

『1年前に、ヘルパーさんと娘が私を無理矢理病院に連れてったんだよ!一人で自転車で行けるって言ってるのに。家の前にタクシー呼んでさ、私の話なんて誰も聞いちゃくれないのさ。1人じゃ行けないでしょ?自転車は危ないから!無理矢理アタシを連れてったんだよ!それが嫌だったんだ。』

それはカズコサンの本音でした。

まあ、それでも今日は病院へ連れて行く!と決めた私の強い思いは変わらず(笑)というか、自分の気持ちの準備が出来ていないのに、出来ない行けないと周りに決めつけられ拉致られるように連れて行かれた事にも腹が立っている。

一人で行けるのに。なんなら家事は自分でしていて、孫の世話までしてるのに。そっちの都合で無理矢理連れて行くみたいな事をして。危ないのは自分が一番分かってる。だから色々気を付けてる。

この本人の気持ちに、心を寄せる事を誰もしなかったんじゃないかな。

「分かりました。それが嫌だったんですね。。それは失礼よね。カズコさんの言葉を聞いて欲しかったね。じゃあ、行かないなら、カズコさんと長年の付き合いの先生にお断りの連絡、カズコさん連絡入れといて下さいね!行くんだったら、外は日差しが強いから帽子かぶっていってね!」

と、帰りの準備をしていたら、、、、

カズコさん、見た事が無い入れ歯をはめ込んで、帽子をかぶった!サングラスまで掛けて!

『あの先生には御世話になってるから手ぶらで行く訳にいかない。お茶でも買っていかなくちゃ。アンタが出てったら、私も出るよ。アンタ、先に行って買っておいて。あそこのドラッグストアーが安いから!』

「了解しました!じゃあ、宜しくお願いしますね〜」

そしてワタシはカズコんちを出て、家の近くの御寺の駐輪場の影に隠れて、カズコさんが本当に出てくるのか確認。ヘルパー事務所は、今のカズコさんが、家の外で、どのように過ごしているのか、どの程度、認知症が進んでいるのか、細かく誰も把握していない。誰も説明出来ないのだ。これに私は驚いた。

私がケアマネに電話で言われた言葉はこれだ。

「あの人、認知症が入ってる所と入ってない所があるから。」

専門職、、、ですよね?

色々考えながら物陰に隠れてカズコさんを待ってる時間は、なんかワクワクした。5分くらい待つと、

坂の上から自転車のベルの音がした。チリンチリンチリンチリン!

カズコさんが自転車で降りてきたではないか!グラサンが似合う(笑)

初めて見る、外の世界のカズコさん。カッコイイ!私は自転車で先回りして、2リットルのペットボトルのお茶を2本購入し、カズコさんを待つ。

向こうからグラサンママチャリのカズコさんが、ゆっくり走ってきた。

二人で計8本の2リットルのお茶を持って(ほぼ私が持って行ったけど)病院までの道を行く。駅前まで出るのに、急坂を上がらなきゃいけなくて、「一人で行ける」と言い張るカズコさんに、上手い事を言いながら、右に自分の自転車。左にカズコさんの自転車の後ろの荷台を押しながら、坂を上がる。

坂を上がり切ると、平坦な道が続く。が、病院までたどり着くのか、果たして病院までの道は、まだ覚えているのか。

誰も知らないので(笑)確認したいヘルパー事務所、と、娘さん。

一人で行きたいカズコさん。それを確認したいワタシ。

先行ってて、と言うので、50メートル先を私が走り、後ろを見ながらカズコさんの姿を確認。

走る事30分。病院に着いた。病院の受付に、カズコさんが来る事を伝え、お茶を渡す。先生、カズコさんの認知症の事を心配していたらしい。

無事にカズコさんも病院に到着。

『あんた、もう帰っていいよ!』

はいはい。帰りますよー。と、事務所へ電話。

「え?!病院行けたんですか?どうやって?自転車で?カズコさん、自転車乗れるんですか?病院までの道、覚えてるんですか?」

ツッコミどころ満載なので、続きは次の記事で。


mayu 

なんだか、リンクを上手く貼れないので、コピペする事に、しました。

「病院へ行けないカズコさんの理由」



お孫さんと三階建の一軒家で、二人暮しのカズコさん(仮)。

軽度の認知症の症状があり、私が週1でヘルパーとして関わる様になる。私がヘルパーを辞める8ヶ月後まで結局、お孫ちゃんに会える事は無かった。

訪問看護とホームヘルパーを利用していたカズコさん。初めは警戒心バリバリで、浴室で洗濯を黙々としていた。背中を見せながら、

「新しいヘルパーさん?宜しくね〜」

と挨拶をしてくれた。

初めの1ヶ月こそ、必要最低限の事しか話してくれなかったが、だんだん顔を覚えてくれ、粘り強く、他愛もない事を話し掛け続け、信頼してくれ、同じ話を何回も話してくれるようになった。

ヘルパーの仕事の内容は、服薬している薬の残数を記録する事や掃除。カズコさんは、長い間、呉服屋で販売の仕事をしていただけあって、お話が上手!べらんめい口調で明るく話してくれる可愛らしい、ばばちゃん。

三階建ての家を掃除機掛けする私の後を、膝が痛いと言いつつ、追い掛けながら話し掛けてくれるまで、関係を詰める事に成功。

彼女は、自分の様子が何かおかしい事に気付いていた。危ないから火は使わないんだ、と、自炊をやめていた。宅配弁当を頼んでいるのと、歩いて15分の商店街まで一人で買い物に行っていた。

彼女は言った。

『80超えたら何かしらの病気にならないと死ねないんだよ。病気のひとつやふたつ怖かないよ!』

さすがです。カッコイイです。

ある時、ヘルパー事務所から相談があった。カズコさんを、かかりつけの病院へ連れて行って欲しい。1年前にヘルパーさんと家族と行ったきり、行けてない、と。御本人に、病院へ行って欲しい旨を伝えると、

『一人で行けるから大丈夫!』

と言うが、1年行けてないんだ、と。

フムフム。了解しました。

早速その話をカズコさんに、した。

「カズコさん、来週の土曜、私の掃除が終わった後、11時半に、○○医院に行って欲しいと、ムスメさんに言われたの。私、一緒に行った方が良いですか??」

『ああ、分かった分かった!大丈夫だよ〜!一人で行けるから。』

「分かりました〜。とりあえず、私、掃除だけしに来ますからね〜」

『分かった分かった!ありがとね!じゃあまた来週ね!』

(前振り完了!)

そしてワタシは帰宅。

そして次の土曜が来た。カズコさんちに行くと、、、

続く