父の終戦日3 | mayuminのブログ

mayuminのブログ

ブログの説明を入力します。

しばらくすると

時計屋さんが人を乗り越えながら

父の元へ戻って来た


「〇〇(父の苗字)さん!

キミの妻君(さいくん、妻の事)が!

この船に乗っているよ!!」


時計屋さんは大事な鞄を探して

船内をくまなく回ったらしい

(ちなみに鞄は見つかった)

お陰で父は妻と会うことが出来たのだった。


時計屋さんに案内されて

人をかき分け時に乗り越えながら

船内中央に行くと

妻はご近所の人達(一緒に逃げた)と

平和におにぎりを食べていた。


感動の再会どころか

既に父も乗船した一部始終を

時計屋さんから聞いていた妻や町内会の人達

「良かったねぇ」

「ほら、おにぎり食べなさい」


父のテンションとは違い

あまりにのんびり平和な雰囲気に

拍子抜けした。


船は無事に北海道のどこかの港に着いた。


父とその妻は

『これからどうしよう』と

やっと途方に暮れた。

現実に返ったのだった。


二人は見合い結婚で

妻は樺太に嫁いで来た。

そこから父の父との三人暮らしだったが

父の父親は戦争中に病死

妻はその遺骨だけを大切に持って船に乗った。

二人には何も荷物はなかった。



何とか最寄りの駅まで辿り着き

二人で呆然と座っていると

妻が

「あ!父さんだ!」


妻の父親が馬車に乗り

娘が居ないか?とあちこちの駅を

回っていたらしい。


妻とその父の感動の再会を見守り

そのまま妻の実家に身を寄せる事に。


父は義父とは婚礼の時に会ったきりだったから

もし、妻が居なければ

義父のことはわからなかったし

義父も同じだっただろう。


「という事で…

パパはほとんど苦労しないで

とんとん拍子に引揚て来たってわけさ


しかし、あの港の出来事は…

突然何百人の人が押し寄せて…

あれは忘れられないな」


そして

「情けは人の為ならず

がパパの信条だけど

パパはそうして人を助け

人に助けられて

生きて来た。

だから、お前も何か見返りを求めず

誰かを助けてあげなさい

いつか巡り巡ってそれは自分に返って来る。

血が繋がらない他人同士も

助け合って生きていくんだよ」


父の終戦日の話だった。


終わり