今回のテーマは、熊本県菊陽町に建設された世界的半導体メーカー**「TSMC(台湾積体電路製造)」の工場と、そこにおける「水資源」**のストーリーです。
第1工場の量産開始から約1年が経ち、第2工場の建設も進む今、そこで行われているのは単なる工業生産だけではありませんでした。今日は、記事から得たファクトを整理しつつ、私なりの視点でシェアしたいと思います📝
🏭 1日3万トンという「衝撃的な数字」
まず、半導体製造になぜこれほど注目が集まるのか。その理由の一つは、使用する「水」の圧倒的な量にあります。
記事によると、TSMCの熊本第1工場全体での総使用水量は、最大で1日当たり約3万トン。 これは、約10万人分の生活用水に相当する量だそうです。数字を聞いただけでも、その規模感に圧倒されますよね😲
なぜこれほど水が必要なのかというと、半導体の基板(シリコンウェハー)を加工する際、薬剤などを除去するために何度も何度も洗浄を繰り返す必要があるからです。この時、不純物を極限まで取り除いた**「超純水」**が不可欠になります。
地下には、サッカーコート約3面分(約2万2000㎡)にも及ぶ巨大な水処理施設があり、そこで「RO膜(逆浸透膜)」などのフィルターを通して超純水が作られています。
しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。 「地域の地下水を、一企業がそんなに使って大丈夫なの?」
TSMCの生産子会社であるJASMのファシリティデパートメントマネジャー、坂本龍治氏はこう述べています。 「半導体製造は多くの水とエネルギーを使用する。資源の使い方や環境への配慮なしに生産活動を持続できない」
この危機感こそが、彼らの革新的な取り組みの原動力となっていました。
♻️ 日本初!「36種類の分別」と驚異のリサイクル技術
TSMCが掲げる水資源管理の柱の一つが、徹底した「水の循環利用」です。 なんと、工場で一度使った水を処理し、リサイクルして再利用する率(リサイクル率)は75%に達しています。単純計算で、水分子1つあたり約4回も繰り返し使われていることになるそうです👏
私が特に「すごい!」と唸ったのは、その技術的なこだわりです。
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36種類への厳密な分別 洗浄や研磨などの工程で出る排水を、なんと36種類ものカテゴリーに分類して、それぞれ最適な処理を行っています。家庭ごみの分別でも大変なのに、工業排水でここまで細分化しているのは驚きです。
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日本初の「低濃度TMAH回収システム」 ここが少し専門的で面白いのですが、半導体の回路パターン形成には「TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)」という強アルカリ性の薬剤が使われます。 熊本工場では、この低濃度TMAH廃液に塩酸を加えて中和し、特殊な樹脂の槽を3つ通過させることで効率的に除去・回収するシステムを導入しました。これは日本の半導体製造業界では初の試みだそうです✨
こうした努力の結果、地下からの取水量は1日当たり約7500トンにまで抑えられています。
🌾 「使った水の3倍を返す」という約束
そして、今回の記事で最も心を動かされたのが、**「地下水涵養(かんよう)」**というアプローチです。
工場での節水だけでなく、地域の地下水を「増やす」活動にも力を入れています。 2024年の実績では、なんと熊本第1工場の取水量の3倍に相当する、約500万トン分の涵養を実現したとのこと。 まさに**「3倍返し」**です!
具体的には、冬場の使っていない水田に水を張る「水田湛水(たんすい)」という手法を推進しています。田んぼが巨大な受け皿となり、水がゆっくりと地下に浸透していくことで、地下水位が保たれる仕組みです。
さらに素晴らしいのが、この活動が地域経済とリンクしている点です。 JASM(TSMC子会社)は、涵養促進のために主食用米の作付面積拡大にも取り組み、協力農家からお米を**「涵養米(かんよう米)」**として支援金を上乗せした価格で購入しています。
買い取られたお米は、工場の社員食堂で提供されるそうです🍙 最先端のエンジニアたちが、自分たちが守った水で育ったお米を食べる。 この**「地産地消」と「環境保全」が一体化したサイクル**は、企業のSDGs活動として一つの理想形ではないでしょうか。
🌏 グローバルな視点:なぜ今「水」なのか?
TSMCがこれほどまでに水資源管理に注力する背景には、2021年に台湾を襲った「56年ぶりの大干ばつ」という実体験があります。 当時、水不足が半導体供給に影響を及ぼしかねない状況となり、給水車で水を運ぶ事態にまで陥りました。 「水リスクは、経営リスクそのものである」。 その教訓から、水資源が豊富な熊本への進出を決め、同時に徹底した管理体制を築いたのでしょう。
また、世界的なルール形成の動きも見逃せません。
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CDP(国際NGO)の評価: 企業の環境活動を評価するCDPは、2010年から「水セキュリティ」に関する質問を開始しましたが、2022年以降その質問数は急増し、より詳細なデータ開示が求められています。
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欧州(EU)の戦略: 2025年6月には「欧州水レジリエンス戦略」が発表され、半導体工場などに対して水の使用効率の最低基準を設定することが提案されています。
熊本県自体も、2023年10月以降、地下水採取者に対して「採取量の100%涵養」を義務付けています。 TSMCの取水量はグローバル全体で1億2880万トン(化学産業と同等規模)にも及びます。熊本工場も第2工場を含めると約800万トンの取水が見込まれていますが、「100%以上の涵養」を約束することで、地域社会との共存を図ろうとしているのです。
✨ 課題と未来への展望
もちろん、全てが手放しで楽観できるわけではありません。 記事では、PFAS(有機フッ素化合物)への対応についても触れられています。 第1工場稼働後、排水を流す河川で規制外のPFAS濃度の上昇が確認されたそうです(健康被害はなく、各国の規制値は下回っているとのことですが)。 地域住民の方々からすれば、やはり不安は尽きないはずです。
工場排水のモニタリング(pHやフッ素濃度など8項目を計測し、基準を超えたら自動でバルブが閉まる仕組み)を徹底し、透明性を持って情報を開示し続けることが、信頼構築の鍵になるでしょう。
今回のニュースを通じて感じたのは、 **「最先端のテクノロジー産業こそ、最も自然資本(水や空気)に依存している」**という事実です。
私たちも、便利なデジタルデバイスを享受する一人の消費者として、その裏側にある「水」の物語や、企業の環境への姿勢に対して、もっと敏感でありたいなと強く思いました😌
少し長くなりましたが、技術と自然、そして地域社会がどう向き合っていくべきか、皆さんと一緒に考えるきっかけになれば嬉しいです。



