20年ほど前のとある秋の日
骨董通りから少し入った場所にあるマンション2階の一室を訪ねた
訪問した先は
日本国内でも他に類を見ないフィッティングをおこなうことで有名な店だった
高校時代に初めてテレビでその名前を知ったものの
以後何年もその記憶は眠っていたはずなのに
ふと突然想い出したわたしは居ても立ってもいられず訪問を決めた
それなのにインターホンを押そうとする手が何度もためらわれるほど
妙な緊張感にわたしは包まれていた
どうしてそんなにためらう必要があるのか
その答えをわたしは本能で知っていた
「この扉を開けてしまったらきっと元の感覚には2度と戻れない」
からだと
あれから随分長い時間が経つ
店は吉祥寺へと移転し
巣立ってゆくスタッフの方々も見てきた
わたしも
職場が変わったり病気になったり人生の転機を迎えたり
その都度このお店を訪問し
その都度お店のみな様に助けていただいてきた
あのとき
わたしの本能が導き出した答えは正しく
わたしは来た道を逆戻りすることなく「いま」に至っている
ここに辿り着けたことはこの上ない幸運だと信じて疑わない
その店のスタッフのおひとりが今月で退職なさるとつい先日知った
初めて青山のお店で見かけたとき
なんて美しいひとだろうと思ったかただった
とにかくこれまでの感謝をお伝えしたい一心で急遽訪問の希望を伝えると
あの頃から変わらないよく通る明るいお声で出迎えてくださった
「mayukoさんは本当に全然変わらないわ(←年々維持管理が大変になっていますw)
親戚の子のような気持ちでずっと見守ってきました(←意外と年齢はそんなに変わらないのではw)
初めてウチにいらした頃からレースのお好みが『オトナ』でね
すごく意外だったのを覚えていますよ」
確かにわたしは意外と好みにウルサイ
ウルサイなりに新しい発見をしたり
それまでとは違うテイストのものを選べるようになってみたり
そんなわたしの変遷を北極星のように見続けてきてくださった
想い出話のほかに趣味(沼www)のハナシや
勿論商品に関すること
自分の骨格が世間が想像する以上に『ニッチ』で『一般的ではない』ものであること
今後の夢やビジョン
などなど
こんなにたくさんお話しをしたことがあっただろうか?
というほどに会話は尽きることがなく
大爆笑しながらあっという間の1時間半が過ぎていった
名残惜しい気持ちを抑え
改めて感謝の気持ちをお伝えし
わたしは店をあとにする
寂しくないと言えば嘘になる
ひとは何度こんな想いを経験するのか
でも
新しい一歩を踏み出そうとするその決断は素晴らしいと思うし
心から応援したいとも思う
五明さん
今度は店先で客同士として会えるかもしれませんね
そのときを楽しみにしています
20年間お疲れ様でした
心からありがとうございました

