この世に【永遠】と【絶対】はない

わたしはそう信じて疑わない



だけど
もし叶うのであればこれからもずっと続いて欲しいと願うものがある
 


「おとうさんのお豆腐」



わたしが勝手に呼ぶそれは商店街から少し離れたところにポツンと佇む古い豆腐屋の商品
 


通勤の最寄り駅から自宅へと帰るルートとは真逆の豆腐屋へわざわざ足を運ぶのは
それが恐ろしいほど美味しいから
ふつう?の豆腐、おぼろ豆腐、よせ豆腐のみならず
薄揚げも厚揚げもがんもも豆乳もおからも美味しい
もうスーパーでそれらを買うカラダには戻れないと思う
 


そして
わたしと同様に『スーパーではもうお豆腐を買えない病』に罹ってしまった人々がひっきりなしに訪れる
 


店の外観は失礼ながらまるで『吹けば飛ぶような』雰囲気
同時に
いつなんどき『閉店しました 長きにわたりご愛顧くださりありがとうございました』という貼り紙がなされていてもおかしくはなさそうだ
 


店主のおとうさんも、おかあさんもどう見てもお若くはない
そればかりか長年のお仕事のせいなのか足腰があまり良くなさそうにお見受けする
 


果してあとどれくらいこの超絶美味なお豆腐を頂くことができるのだろう
わたしは猛烈な危機感を覚える
 


でも
それも止む無し
この世に【永遠】と【絶対】はないのだから
 


今日もおとうさんのお豆腐を買いに行った
仕事を終えて店に辿り着くころにはとうに日が傾いている
店も閉店時間が近いはず
 


薄暗い店内にいるおとうさんに欲しいものを伝えると売り切れていることもある
今日はがんもが売り切れていた
 


「ありがとうございます、また来ますね」
必ずそう伝えてからわたしは店をあとにする
おとうさんのお豆腐が美味しくて好きなんですという気持ちを込めて
 


こんなに短くて簡単な言葉を伝えなかったがために一生涯後悔するような自分ではありたくないのだ
 


さて今夜も元宮内庁料理人レシピの『中華豆豉鍋』にしよう
おとうさんのお豆腐と一緒に