父と最後のドライブが終わった




 




運転席が定位置だった父は
今日後部座席にいる



霊園までの道程は約一時間半
長いようであっという間だった



お寺様を呼ばない納骨式だというのに
わたしと妹のほかに
父のいとこなど高齢の五名が来てくださったことに驚きを隠せない



ただお骨を納めるだけにも関わらず
「どうしても」
と遠路はるばると



そしてわたしは
父と祖母の知らなかった一面を知る



祖母は紡績工場の職長を務める傍ら
内職までして親戚一堂をも養っていたこと
(だから「大統領」と呼ばれていたのか!と納得)



父は父で親戚のためにかなり尽力していたこと



知らないことばかりだった



わたしの中のありとあらゆることが誤認であり
一方向からしか見ていなかった現実を知り
こども時代の自分が祖母と父にとった残酷な仕打ちを心から悔やんだ
あの頃のわたしはいまより遥かに尖っていたから



そして
わたしと妹が想像していた以上に
ご参列くださったみな様はあたたかかった



祖母と父が撒いた良い種が
巡り巡って今日の式に繋がったのだと思う
善因縁は善因縁を生む、というのは本当のようだ




 


 


 


 


 
昼食はカニと松茸の御膳にしました




昼食会を終え
タクシーに乗り込むみな様を見えなくなるまで最敬礼でお見送りして
最後にわたしと妹が乗るタクシーを待つ



ご参列くださったみな様とは
もう二度とお会いすることがないかもしれない
などと思いながら



ふと涙が込み上げた



父が旅立った瞬間も葬儀のときも追悼ミサのときもまったく涙が出なかったのに
これで一区切りついたのだという気持ちと
これで本当に父とは一旦お別れなのだという気持ちと
良い父に恵まれたという気持ちとがぐちゃぐちゃになって
久しぶりに声を震わせて泣いた



「おねえちゃんは良くやったよ」
わたしは大したことはしていなくて
誰もが経験することをやっただけで
スゴイことはしていないけれど
妹の言葉が身に染みる



「お父さんはヒーローだった」
妹のこの言葉はまあまあわたしにも当てはまり
これを綴る今も涙が止まらないままだ
これは一体何なんだろう



朝は雲っていたけれど
すべてが終わるころは頗る晴天



「おばあさんは晴れ女だったから!」
と妹曰く
父との最後のドライブに
晴れやかな花道を用意してくれたのかもしれない



おばあさん
お父さん
お父さんの親戚のみな様
石屋さん
レストランのみな様
霊園事務所のご担当者様
ありがとうございました



何よりも
父に関わったすべてのみな様に心から感謝申し上げます



ありがとうございました




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