塾へ行く数時間前
とあるかたへ連絡をした
「ご無沙汰しております
実は乳がんの疑いがあり患部がジンジンと痛むのです
先生のレイキで癒して頂くことはできますか?」
連絡先は
4〜5年ほど前に知り合った所謂「占い師」のかた
すぐ電話が掛かってきた
「いつが良いですか?早い方が良いですよね?」
「週明け早々に検査結果が出ます
叶うならその前に…明日とか」
無理を承知で打診すると
「明日?!
わたし直前の予約は受けないんだけれど…でも午後なら大丈夫」
運良く塾の翌日にアポイントを取ることができた
当日
駅まで先生が出迎えてくださった
いつも朗らかなお顔なのにその日は厳しい表情をなさっていて
サロンへの道すがらわたしに言った
「最近同じようなご相談が多いんですよ」
「乳がんや子宮頸がんとかね」
「乳がんが心配なのは全身に散ってしまうこと」
「最終的には【命の選択】になるの」
「あなたは何を何処まで望んでいますか?」
サロンに到着してからも問診は続いた
御代をお支払いするのだし
助けを求めたのだからと腹を括り本心を明かす
「叶うならこのしこりが消えて無くなればいい」
「奇跡があるのなら起こって欲しい」
「手術なんてしたくありません」
「変形して歪むバストなら要らない」
「だけど失うのが猛烈にこわい」
いつしか涙でグショグショになりながら
みっともないとか情けないとか
そんな気持ちも途切れ途切れになりながら隠さずにお伝えした
「わたしはインチキ占い師みたいに『○○すれば病気が消えます』とかそんなことは言いたくないし言わない」
「あなたにとってわたしが出来ることしか出来ないし
わたしがわかることしか伝えられない」
承諾したわたしは
じゃあ横になってと施術台に促された
「聞きたいことがあれば何でも聞いてください」
先生はそうおっしゃってわたしの身体に手を添える
暫くして
「患部に手を当てても良いですか?」
と聞かれたので承諾
「これ…悪性なのかな」
ボソッと先生が呟く
「ちょっとハッキリしないなあ」
「明らかな病気のひととは違うんだよね」
下着屋のオーナーの言葉が被り
先生のエネルギーがどんどんわたしのカラダに流れてゆく
麻炭のオーナーがご厚意で分けてくださった
麻炭染の端切れを患部に当てているのだと伝えると
「麻は波動が高いんですよ」
「古くから日本にありますし」
「神社のしめ縄とかも麻ですしね」
しめ縄は稲製だと思っていたわたしには衝撃の事実
それからどれほど時間が経ったのだろう
急に咳を抑えきれなくなったわたしを見て先生がおっしゃった
「大丈夫ですか?」
「はい…急に咳が込み上げてきて…」
乾燥かしら?
と言いかけた言葉を遮るように先生がおっしゃった
「やっと出ましたか」
「え?!」
「溜まっていたものが咳になって出るんです」
「普通はもっと早くに出るけれど今回は時間が掛かりました(笑)」
「出て良かったです」
時計を見ると軽く1時間が経過していた
「流したあとだからお水飲んでくださいね」
とペットボトルをわたしに手渡しながら先生は続けた
「手術に対して今はどう思いますか?」
「部分切除でも外観が損なわれないならいいかなって…そんな気持ちになりました」
「美観が損なわれるのがとにかく厭でした」
そんなわたしと
わたしの向う側を見て更に先生はおっしゃった
「最悪でも最小限」
「あなたの美は損なわれることはない」
「だから安心して」
思いがけない言葉に涙がとめどなく溢れた
ふと
健診の日からジンジンと続いていた痛みが
いつの間にか消えているのに気づくと
「正直なハナシ今日お顔を見た瞬間は『深刻だな』って思いました」
「美を取るか命を取るか…かな?って」
「でも部分切除を受け入れるならきっと大丈夫」
「それにあなたが困ったときには助けてくれるひとが必ず現れるみたい」
「はいこれ」
そう言って先生は
サロンに飾られていた枝から葉を摘み
わたしに手渡してくださった
「わたしがよく行く山の葉っぱ」
「良いご縁を結ぶように」
「それはお医者様かもしれないしわからないけれど」
わたしは
対価というものを確かにお支払いした
けれど
「一緒に戦います」
そう言い切ってくださったその姿にどれほど心励まされたかわからない
実はこちらのかたは
とわたしに提案してくださったかたでもある
今現在ランジェリーを生業にしていないものの
何となく点と点とがうっすらと繋がりそうな予感がした
未だ成し遂げられてはいないのだけれど


