そもそも軽減税率の対象を飲食料品に限定し、そこからさらに対象品目を絞り込むというスタート地点からして、財務省の「減収をなるべく抑えたい」という思惑どおりになってしまっていることが問題です。

「低所得者対策の観点から生活必需品に絞り、生存にかかわるものや購入頻度が高いものを考えた」とのことですが、生活必需品は飲食料品だけではありませんよね。電気・ガス・水道などのライフラインや、トイレットペーパー・シャンプー・洗剤などの日用品、衣料品や寝具なども、生活には欠かせません。

公明党案の新聞・書籍は除外するとのことですが、低所得者には新聞も本も必要ないとでもいうのでしょうか。食料が身体に栄養を与えるように、書物で心に栄養を与えることも、生きていく上で大切なことです。また、学生にとっては、勉強に必要な書籍は、これから社会に出て働いていくために欠かせないものです。新聞・書籍を除外するということは、日本の将来を考えずに、今しか見ていない、実に短期的な視点と言わざるを得ません。

「衣食住」のうち住居の家賃については、もともと消費税は非課税ですが、店舗や事務所の家賃には消費税が課税されています。みなさんがお住まいの近所にもあるような、家族経営で細々とやっているような商店主が払う家賃についても消費税率を上げてしまえば、彼らの生活を脅かすことにもなりかねません。

どこで線を引くかは確かに難しい問題ではあります。しかし常識的に考えれば、生活に必要なものを飲食料品に限定することは、明らかに間違っています。

ひとつ案を示すならば、品目ではなく業種・業態や売上の規模で線を引くことが考えられます。みなさんの近所にあるスーパーやコンビニ、八百屋や花屋や床屋などの個人商店・中小零細企業については、消費税を据え置くことにしてもよいのではないでしょうか。

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軽減税率、飲食料品に限定 与党 酒除外など8例試算

2014年5月16日 東京新聞朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014051602000127.html

 自民、公明両党は十五日、与党税制協議会を開き、生活必需品の消費税率を低く抑える軽減税率の対象品目を、飲食料品に絞り込む方針で一致した。その上で、具体的な対象品目として「すべての飲食料品」から「精米のみ」まで八通りのパターンを示した。

 消費税は税率1%あたり二兆五千億円前後の税収を見込んでいる。自民党や財務省は軽減税率を導入した場合に税収が減るため対象品目を極力絞りたい考え。一方、公明党は生活者の負担を減らそうと軽減税率の早期導入を目指している。

 この日の議論の結果、軽減税率の対象は生活に欠かせない飲食料品に絞ることで折り合った。理由について、自民の野田毅税調会長は「低所得者対策という観点から生活必需品に絞り、生存にかかわるものや購入頻度が高いものを考えた」と説明した。公明党が当初提案していた新聞・書籍は除外する方向だ。

 会合では、飲食料品のうち何を対象品にするかの線引きと、消費税1%あたりの減収額のパターンを八通り例示した。もっとも適用範囲の広い「すべての飲食料品」は、減収額が六千六百億円となる見込み。飲食料品から酒を除いた場合は六千三百億円、飲食料品から酒と外食を除いた場合は四千九百億円-など対象品を絞り込むごとに減収額は減っていく。今後は、事業者の経理事務など細かい制度の設計を進め、月内に軽減税率の基本方針をまとめる。六月には試案を業界団体などに示し、各方面の意見を聴取した上で制度の概要を詰める。