「はぁ〜今日も面接か....これで何回目だろう」
そう、つぶやくのは紛れもない私。
多分もう、面接はこれでかれこれ50社以上は越えている。



この頃は、ちょうど氷河期時代と言われていて
大学生の就職先がなく留年する人も大勢いた。
ハローワークには2時間待ちの長蛇の列が出来ていて
転職活動をする者にとっては最悪だった。



そんな、大変な時期に
私はというと見ての通り転職活動中!
しかも、条件は最悪で
・高卒
・資格なし
・2社を1年以内に転職している
など、どう考えてもまともな転職は無理。



それでも、この頃は
1人暮らしもしていたし
会社に雇われることが当たり前だと思っていたから
なんとかしてでも、定職につかなければならない状況だった。



ある日、高校時代に仲が良かった華子と
ランチをしているとき
「どう、会社見つかった?」

「ううん、面接何回も受けてるけどダメ...」

「そっかぁー...大変だね...」

「そういえば、華子は短大卒業して保育士だよね。
高校の頃、保育士になりたい!って言ってたし
どう、保育士の方は?」

「まぁーねぇー、保育士って大変な部分もあるけど
やっぱり夢だったからやりがいはあるかな」

「そうなんだぁー、羨ましいなぁー」

「きっと、まゆかもいいところ見つかるよ!
でも、まゆかも高校生の頃に美容師になるって言って
美容師の道に行ったよね?
なんで、辞めちゃったの?」

「あー、うん........」



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あれは高校生の頃の話






「はーい!では、皆さんも高校3年生なので
そろそろ、進学か?専門学校か?就職するか?
決めて頂きます!
親御さんとしっかり話し合って
紙に書いてきて下さいねー」



「ねぇねぇ、まゆかはどうするの?」

「どうだろう〜夢とかわかんないし....
大学いける頭でもないからねぇー」

「わかるー!夢とか今まで考えたこともなかったもんね....
私は多分就職の道に進むかなぁー」



と話しているのは、高校の頃に1番仲良かった明子。
明子はとっても明るくて少し乙女なところがある
将来の夢は可愛いお嫁さんになることだからと
就職の道を既に選んでいた。



(はぁーどうしようかな....夢とか正直ないし
私の得意なこと?そうゆうのもないしな....
あっ!そうだ!美容師はどうだろう??
母親が昔、美容師だったし
母親がやってたんだから私にも才能あるんじゃね?)


そんな単純な想いから私は美容師の道に進もうと
決意していた!
その日、母親に私の想いを言うと...



「あのさー、高校卒業したら
美容専門学校行きたいんだけど」

「はっー?あんた美容師になる気なの?」

「うん....」

「美容師は大変だよ‼︎あんたには無理よ。
それに、うちは母子家庭でお金ないんだから
専門学校なんていけるわけないでしょ」
そう、突っぱねる母親....



うちは、母子家庭で育ち
母親が私を育てるまで必死に働いていた。
母子家庭でも、私を人並みに育てようと働きづめの日々でストレスもあってか
私の意見は、否定するばかりで
認めてもらったことも褒められたこともない。
正直、私は育ててくれたことには感謝しているが
母親のことが苦手だった。




いつしか、私は母親に反抗をすることを辞め
何も母親には相談もしなければ、喋らない
そんな生活がずっと続いていた。




(あぁー今回も、また否定されたか...
まぁー専門学校行かなくても
なんとかなるかぁー)
と母親と口喧嘩するのは避け、専門学校の道を
すんなり諦めた。




そして、紙に『就職』と書いて
学校に行き先生に提出したのであった。



「ま〜ゆ〜か‼︎
どうするか?決めた?」
そう休み時間にふいに声をかけてきた華子。 

「まぁーねぇー
本当は美容専門学校行きたかったんだったけど
うち、母子家庭だし母親に言ったら
そんなお金ないよ!!なんて言われちゃったから
とりあえず、就職かなぁー」

「えー!!美容師になる夢は?」

「就職して美容師になる道を探すよ」

「そーいえば、華子こそ決めたの?」

「あっ!私?
うん、短大行くことに決めたんだ」

「へー!いいじゃん!夢とかあるの?」

「まぁー、一応ね。
保育士さんになりたいなぁーって思ってたから」

「いいじゃん!!華子の保育士姿が目に浮かぶ」

「そうかなぁー?(笑)」

この頃、華子がちょっぴり羨ましかった。
私の場合、美容師になるのが夢とかじゃなくて
美容師を目指す理由が母親がやっていたから
私にも才能があるんじゃないか?って思って
美容師を目指しいるのに対して



華子は
保育士さんになるのが夢ってはっきり言えることに
自分が恥ずかしかった。



そして、私は高校を卒業して
働きながらお金を貯めて
美容専門学校に行きながら国家資格を取れる
美容院に入社することになった。



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