秋の祭り
毎年、祭りの日には太鼓の響きが痛くて何処かへ逃げていた。
でももうそれは出来ない。
ヘルパーさんが居ないと外に出られないし、
ランちゃん(母)の心臓の具合も良くなくて、
あ、それに車をゆかりん(妹)に貸し出してるんだった。
なんだ、何処へも行けないんじゃないか。
ゆかりんに車を貸すとガソリンを入れてくれるから、
荒い運転でもしかすると車が傷んでいるのかもしれないけど、仕方ない。
わたしは交通事故に遭ってから車のスピードが怖くて、
ゆかりんの急アクセル、急ブレーキで、更にスピード違反気味の運転は怖くて一緒に乗ってられない。
ランちゃんの安全運転でないと安心して車に乗れない。
毎年だいたいイオンに逃げていたけど、車無いんだった、そうだった。
逃げなきゃ行けないほど太鼓の振動は体に響く。
祭りで近所にはそれぞれの家の親戚が集まっていて、
その祭りの客たちが獅子舞が来るとハナを打つ。
ハナの数だけ獅子舞が舞われる。
うちの向かいは商店なので、親戚に加えて店の客もハナを打つ。
「おんさけ、さかな、さわやまーっ!」
獅子舞の青年団はそう声を張り上げる、が、
打たれたハナはだいたい青年団の酒に消える。
この辺、農家も無くなって、祭りの意味はなさなくなったと言うのに、
青年団の酒代稼ぎの獅子舞は無くならない。
笛もタイコも無くならない。
骨に響くんだよ。太鼓。
逃げられないから、今日はいつまでも続くお向かいの獅子舞に堪えなければ。
テレビもエアコンも点けずに居留守を決める。
でも、
昨日まで最高気温が25℃くらいだったのに、今日は28℃まで上がるそうな。
わたしはエアコン無しでいける気温だけど、心臓の悪いランちゃんにはキツイ。
この辺りを獅子舞がまわるのは夜らしい。
朝の涼しいうちに来て欲しかったな。
夜、息を潜めて居留守。
ハナ代が勿体無いしね。
青年団の酒代を、なんで年金生活のうちが出さなきゃなんないの?
痛い病人が居るって、もうそろそろわかって欲しい。
あーやだやだ。