高校を卒業した私は、某パンメーカーに就職した。
何十人かの新入生達は、研修を終えた後、皆それぞれの部署に
配属されていった。
えっちゃん
とも
美鈴
私
花も恥じらう18才・・・娘18 番茶も出花・・・の私たち4人は、
営業部に配属された。
4人とも揃って田舎っぺだった私達は、研修を受けた製造部とは、
うって変わって、活気に満ちあふれたこの営業部で、実にいろいろ
な経験をしていくのであった。
私達4人は、すぐに仲良しになり、どこに行くにも何をするにも、
いつも4人一緒に行動するようになった。
営業の4人娘・・・と、会社中で評判になり、営業部のおじさま達から
も、先輩のお姉さま達からも、ガキ扱いされながら、仕事の時だけじゃ
なく、遊びの時にも可愛がってもらっていた。
地方から就職する人が多く、ほとんどの人が会社の寮に入ったが、
美鈴は、入寮せずに、どっかから通ってきていた。
どっかから・・・というのもおかしいが、出身は九州だから、実家から
ではないし、アパートだったら私達に遊びに来いというはずだし、って
感じでいつも疑問に思ってたけど、美鈴自身が何も話さないから
私達も特に追求するようなことは、しなかった。
、
女子寮での生活は、ほんとに楽しかった。
門限さえ守れば、あとは自由だった。
男子寮は少し離れた場所にあったが、女子寮は会社の敷地内で、
正門のすぐ横にあった。
終了のベルが鳴ると、男の子達は正門のあたりでたむろして、女の子
達の帰りを待ち、女の子達もすぐには寮の中に入らず、キャーキャーと
はしゃいだりして、そして、そぅして、いくつかの恋が芽生えていった。
寮は、先輩と新入生 という二人づつの部屋割りだった。
私の部屋は、最上階の一番奥・・・
部屋の先輩は 泉 というこれまた、とてもきれいな人で、一目で
憧れのひと となった。
泉先輩の、泉が名前だったのか、名字だったのか、もう忘れてしまった
が、とても綺麗なのに、とても優しくて、もじもじしている私の荷物を
てきぱきと片付けてくれたり、いろんな料理を作って食べさせてくれた
り、洗濯物をたたんでくれたり、まるでお母さんのように私の世話をよく
してくれたものだった。
その泉先輩が、泣いていた。
彼と別れた夜だった。
部屋のベランダで、月明かりの中 声をひそめて泣いていた。
夜風に揺れる、黒髪の間から見え隠れする先輩の横顔は、息をのむ
程に美しく、私は寝た風を装い、布団の中からずっと見とれていた。
愁いの中にいた泉先輩の、新しい恋が始まるのにそう長い時間は
かからなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく・・・・・・・・。