どれ位の時が経ったのだろうか、私は、夢の中から戻って来た。

でも さっき 店長に抱かれたのは決して夢ではない・・・

凛の体には、確かに現実であった証の様に 

彼の香りや感触が残っている。


店長は、まだ眠っている・・・


『こんな 顔して寝るんだ・・・』 


なんだか嬉しくて頬にそっとキスしてみた。


『ん・・・あっ 凛・・・』

『おはよっ』

『いつの間にか眠ちゃったね・・・凛』




そう言って さっき私を沢山愛してくれた唇で 

優しくキスをしてくれた。



『あっ・・・今 何時だ・・・?』 


彼は突然 慌てた様に、枕もとの時計を見た。

薄暗い明かりに照らされた時計は、もう22時をさしていた。




『大変だ!凛・・・シャワー浴びて支度しよう』

『・・・うん』





大変って・・・

誰のため? 

凛の門限を気にしてるの?




それとも お家で待つ 奥さんと子供の事を気にしてるの?




思わず口から出そうになったが、心の中にそっと閉じ込めた。



あぁ・・・でも なんだか 胸がモヤモヤする・・・



悔しいみたいな 



悲しいみたいな。



そんな事を考えていると、ふいに彼は、私を後ろから抱きしめ


『ねえ 凛・・・一緒にお風呂入る?』

『えっ? やだよぉ・・・恥ずかしいから 絶対に やだよ~』

『恥ずかしい? さっき あんなに可愛い声 出してたのに?』

『もうっ・・・言わないで・・・』


すると彼は、ふふっと笑い バスルームに消えていった。




私、からかわれてるの? 

子供扱いなの? 

なんだか・・・モヤモヤが 治らないよ・・・



間もなくして店長が、白いバスタオルを腰に巻いて出てきた。

タオルはブラックライトに照らされ、なんとも妖艶で 

大人の男なんだなとつくづく感じた・・・




『凛も、入っておいで・・・』

『うん』



バスルームは湯気で真っ白だった・・・

なんだか 夢の中みたいに感じて

目が覚めたら、自分の家だった・・・なんて 嫌だなと 思った。


シャワーを浴び さっきまで彼と繋がっていた部分に触れると

なんとなく 痛いような

しびれている様な・・・





まだ 彼が そこにいるような感じがした・・・




もう帰らなくちゃいけないのに、凄く凄く 彼が欲しい。



『凛・・・早く出ておいで』 

突然 店長が外から声を掛けた


急に 夢の中から 引き戻されたような 寂しい感じがした。

バスルームの扉をあけると 鏡の所に 

私の洋服がたたんであった。

さっき彼が剥ぎ取った下着も

ワンピースの中に隠すように入っていた・・・



優しいなぁ・・・


奥さんにも こんな風にするのかなぁ・・・



もう・・・なんだろう。 

さっきから 心がずっと モヤモヤだよ・・・



そして 鏡に映る自分を見て

なんて 子供っぽい体なんだろうと 少しへこんだ。

でも、この体を 彼は 精一杯 愛してくれたんだ・・・と 

自分に言い聞かせた。




なんか、今日の 凛は ひがみっぽいなぁ・・・



そんな事を、考えながら 着替え終わり 

ベットの方に戻ると 彼はタバコを吸っていた。

青い光に照らされて、青紫の煙が 

彼を蜃気楼のように 包んでいる。

このまま何処か 手の届かない所へ 

行ってしまいそうな気がして 思わず抱きついた。


『おっと・・・びっくりした! どうしたの 凛?』

『どこにも 行かないで・・・行かないで・・・』



私は、小さい子供の様に 泣きじゃくった・・・



『何 言ってるの? どこにも行かないよ。 

明日 バイトで逢えるでしょ?』



そうじゃない・・・

そうじゃないんだよぉ・・・

自分でも頭の整理がつかないんだけど



きっと お家に帰って欲しくないんだよぉ・・・

一緒に居たいんだよぉ・・・



心の中で叫びながら私はしがみついて泣きじゃくっていた。


こんなに急激に好きになるなんて・・・

つい この間まで ただの 店長だったのに。

自分でも不思議な位 好きになっていて

おかしい位 混乱している。

彼は、なだめるように 凛の頭を優しくなでてくれた。 

でも 彼が 時計を気にしているのが 解った・・・



『ごめんね・・・もう 帰ろう・・・』

『凛? 大丈夫?』

『うん 全然平気だよ・・・帰ろう』 


私は急に 大人ぶって 聞き分けのいい女を演じた気になった。

そして私達は手を繋ぎ さっき来た道をもどった・・・


1Fに着き 彼がフロントで会計を済ます。 

フロントの小窓から、私の母くらいのおばさんが

興味深げに二人を見た。

なんだよ・・・つりあわないっていうの?! 

嫌な感じ・・・


『どうしたの 凛? 行くよ・・・』

『うん なんか あの おばさん ムカつく・・・』

『あははは・・・まったくもう・・・』


車は 駐車場からすぐに 国道に出た。 

さっきに比べ 交通量が少なくなったせいなのか

心なし彼はスピードを出している。


『凛・・・また 二人きりになれるかな?』

『うん・・・また 連れて来てね』

『今度は、遊園地か、映画にでも行こうな』

『うん! 遊園地がいい!!』

『OK わかったよ』 


そう言って 運転をする彼の顔は、街頭のオレンジに照らされて 

少し 違った表情に見えた。


『ねえ 凛。 バイトさ 平日だけじゃなく 土日も 来たらどうかな?』

『行く行く! 一緒に 居たいから行くよ♪』

『よしっ 決定だ。 じゃあ 今週の土曜日からね』

『はい・・・』 


凄く 嬉しかった。 

そして 少し モヤモヤを忘れた・・・ 凛って 単純



他愛のない話をしているうちに

車は自宅から少し離れた角で止まった。


『家の前じゃない方が いいよね?』

『だね・・・お父さんに 見られたらやばいしね。 

  今日は ありがとうございました』

『こちらこそ 楽しかったよ。 じゃあ また明日 店でね・・・』


そう言って おやすみのキスをしてくれた


『ありがと・・・おやすみ・・・あっ あのさぁ 』

『何?』





『奥さんにも キス・・・するの?』





『・・・』 




凛の 言葉に 店長は 悲しいような、困ったような顔をした。



『うっそ~ ごめん ごめん なんでもないよ』

『凛 そんな事言わないで・・・ また 行こうね おやすみ』

『うん おやすみ』



凛は なんで あんな事 言ちゃったんだろう・・・

ばかだ・・・凛は・・・



私を降ろすと 車は静かに走り出し、軽くクラクションを鳴らした。

そして 走り去る運転席の窓から 彼が手を振った・・・


ダメだ・・・泣きそう。 



お家に入れないじゃん・・・



ダメだ 泣いたら だめだ 凛・・・




さっき 私を抱いた あの手は、 奥さんに触れるのか・・・



子供を抱き上げるのか・・・



奥さんを抱くのか・・・



モヤモヤが 止まらない・・・だれか 助けて・・・

a man with a family◆妻子ある人・・・なんだ・・・


・*:.。☆..。.*Butterfly 不倫の恋・゚゚・*: