この本の著者、垣谷美雨さんの作品は、強いインパクトを与えるタイトルが多いと感じています。
最近の社会問題を取り上げつつ、非常に読みやすい文章でとっつきやすい、そんな印象です。
最近読んだ作品の感想です。
『七十歳死亡法案、可決』垣谷美雨 著
※商品説明抜粋※
2020年、高齢者が国民の3割を超え、社会保障費は過去最高を更新。破綻寸前の日本政府は「七十歳死亡法」を強行採決する。2年後に施行を控え、宝田東洋子(55)は「やっと自由になれる」と喜びを感じながらも、自らの人生の残り時間に焦燥感を隠せずにいた。我侭放題の義母(84)の介護に追われた15年間、懸命に家族に尽くしてきた。なのに妻任せの能天気な夫(58)、働かない引きこもりの息子(29)、実家に寄りつかない娘(30)とみな勝手ばかり。「家族なんてろくなもんじゃない」、東洋子の心に黒いさざ波が立ち始めて…。
似たようなテーマで、以前にAmazonプライムで『PLAN75』という作品を観ました。
※公式ホームページより抜粋※
少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン75>が国会で可決・施行された。様々な物議を醸していたが、超高齢化問題の解決策として、世間はすっかり受け入れムードとなる
当事者である高齢者はこの制度をどう受けとめるのか?若い世代は?<プラン75>という架空の制度を媒介に、人は何を選択し、どう生きていくのかを問いかける作品が誕生した。
私は身内に介護問題を抱えています。
だからか、こういうテーマについ反応してしまう…
ですので、とても考えさせられる内容でした。
健康寿命が72〜74歳と言われているので
「75歳」という年齢設定が絶妙というか……
安易に感想をまとめることができないので、ここでは語りませんが…
この、映画『PLAN75』は2022年の作品ですが
『七十歳死亡法案、可決』は2012年1月出版
12年も前の作品なのですね。
最近、高齢者の定義を65歳から70歳に引き上げる提言がなされたこともあり、70歳はまだ若い気がしますね。。。
作品中の主人公、東洋子は2020年に55歳という設定ですが、おそらく2012年の頃の、介護で苦労している主婦をモデルにしているかと思います。
この頃はまだ、義親の介護は嫁がやるのが当たり前、実子の夫が妻に任せっぱなしにするのは致し方なし、というか普通、という意識だったのでしょう…
そして、介護保険のお世話になって外部の手を入れることを良しとせず、嫁だけに介護の負担を押し付ける…
少なくとも、今はそういう意識はだいぶ改善されてきているような気がします。
介護は実子、介護保険を利用して外部にお願いできることはお願いする、介護は親の財産の範囲内で、という考えになってきていると思います。
とはいえ、私も人間ができていないので、昔ほど大変ではないかもしれない実親の介護に対してですらストレス感じまくりですが…(いや、でもうちの親は介護経験ないんだよね、だから余計にかも)
まだまだ古い考え方は残っているかもしれませんが、私は上記の考えですし、子ども達に負担を強いることのないように準備したいと思っています。
私はアラフィフ主婦なので東洋子の立場で読んでいくわけですが、前半、ここまで自分を犠牲にしなくてはいけない状況に、イライラしっぱなし、腹立たしい気持ちでいっぱいでした。
この旦那、何なの?!と怒りすら湧いた……
私ならとっくにケンカになってる!!
後半、東洋子がキレて家出(私からしたらむしろ遅すぎる位ですが)することで、周りが困って、うまく動き出すところが何とも皮肉。
でも、こうなってやっと、妻が、母が、嫁が、いかに頑張っていたかということを理解できたんですよね。
こんなに痛快に、全てがうまくいくことはそうないと思いますが、それはまぁ、小説なので 笑。
人間、我慢して飲み込むだけじゃだめなんだよ
行動を起こすことでいい方向に行くことがある
諦めて現状維持するよりも勇気はいることかもしれないけど、その一歩を踏み出すことが大事
そんなことも感じました。
この方の作品は、最後は割とうまくまとまるというか、読後感が悪くないようになっているので、そういう面では、題材とされた社会問題を考えるきっかけとして気軽に読めるのがいいと思います。