昨年、私の勤務先の福利厚生の一環で利用できるようになった「オーディオブック」。

 

今月末付の退職に伴いこちらも解約となるため、その前にと(笑)、いくつか聴いてきた中で、先が気になって一気に聴いてしまった作品がこちらです。


 

『母という呪縛 娘という牢獄』 齊藤彩 著

 


母親に医学部受験を強要され、9浪を経て看護科へ入学した娘。彼女が看護師としての就職を前に母親を殺害した事件は、「医学部9浪」というワードが衝撃的で、私の記憶に残っていました。

 

この本は、著者がその娘あかり(仮名)との面会、何度もの手紙のやり取りや取材を通じて、あかり側からみた真実を淡々と綴っているノンフィクションです。

 

とても丁寧に取材をされていたんだな、という印象で、読みやすかったです。

 


過干渉を遥かに超え、教育虐待という言葉で済ませるには足りない、母親の娘に対する異常なほどの執着や常軌を逸した仕打ちが想像を絶するものとなっており、胸が苦しくなりました。

 

控訴審で提出した陳述書は、「いずれ、私か母のどちらかが死ななければ終わらなかったと現在でも確信している」という言葉で締めくくられているそうです。

 

その言葉の通り、ここまで支配されてしまったら、彼女はいったいどうしたら良かったのでしょう…?

精神的にも追い詰められていて、正常な判断は難しかったと想像できますし、どうしたら自分の人生を手に入れることができたのか……答えが見つかりませんでした…

 

親はお金と労力をかけて子を育てているのだから、それに対して子は親に報いるべき、恩を返すべき、という考えは私は違うと思っています。

日本では「親孝行は人としてすべきこと」という認識がありますよね。

親孝行は素晴らしいことではありますし、我が子が親孝行なことをしてくれたらそれはすごく嬉しいですが、強要するものではない。義務感ではなく自然にそういう感情を持つことができるのかどうかは、親子関係の1つの答え合わせになるんじゃないかなと思っています。

 

彼女の母親の、あまりにも度を超えた行動はある意味ホラーでしかないですし、全く理解ができませんが


親は多少なりとも子に期待をかけてしまうところはあると思います。

それが行き過ぎた結果でもあるのでしょうか…


子どもが体育祭や部活で活躍した、受験に成功した、一流企業に就職した…我が子の成功体験というのは、自分のことのように嬉しいし、褒められたり、認められれば、親として誇らしい気持ちにもなるでしょう。


が、これは子の成功であって親の成功ではないのですよね。

 

自分の人生のリベンジを子どもに託す親や、子どもが自分の人生を生きようとすることを「身勝手」だとか「裏切り」と感じる親はいるのだと思いますが

 

子どもの人生は、親のものではなくて子ども自身のもの。

 

それを見失うことの怖さを感じました。


私自身、我が子が大きくなった今でも、子育て間違えたかな……と考えさせられることはあります。


私の考える幸せと子が考える幸せは違うかもしれませんが、やはりいくつになっても子ども達のことは心配になってしまいます。

本人にとっていい人生が送れていると10年後くらいに確信出来たら、やっと安心できるのかな…


いろいろと考えさせられる本でした。

 


あかりさんが罪を償って出所した後、少しでも穏やかな、「自分のための日常」を送ることができたら…と願ってやみません。