笑顔いっぱい院内学級 「学びたい」意欲後押し

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退院する菅原真優さん(左)。同級生から握手を求められにっこり



朝の会で必ず行う健康チェック。親指を上に向ければ「体調がいい」という合図だ



 入院中の子どもたちが通う学校がある。病棟の一室では、先生と生徒の元気な声が響き渡っている。ともに学び、ともに笑い、いつか退院する日を夢見て。(夕刊編集部・神田一道)

 7月上旬、宮城県立こども病院(仙台市青葉区)で行われた学習発表会。テレビ画面いっぱいに、道地耕介君(7)の顔が映し出された。
 「これから病院にいる人たちのお仕事を発表します」。耕介君は院内学級の2年生。治療で病室から出られなくなったため、この日はビデオでの参加となった。

 「チャイルド・ライフ・スペシャリストは手術室で遊んでくれる人です」「病室を掃除してくれる人もいるよ」
 約5分間、写真を交えながら「病院たんけん」の成果を披露した。「病院の中には24時間働く人がいることを知りました」と締めくくると、約20人の医師や保護者から温かい拍手がわき起こった。

 耕介君が通う院内学級には、小学部と中学部に十数人が在籍している。教室の壁には絵画や時間割が張られていて、雰囲気は普通の学校と変わらない。1日5時間、原籍校とほぼ同じ授業をこなす。

 6年目になる教員の塚辺早苗さん(51)は、ふまじめな生徒を見るとしかることもある。「病気だからと言って甘やかしたくない。医師や看護師とは違う教育的な立場から、子どもたちに適切な助言をしていきたい」と語る。

 院内学級は2003年、西多賀支援学校(太白区)の分教室として誕生した。病院には長期治療の子どもが多く、入院中の学習空白を埋めることを目的に開設された。東北有数の高度小児医療専門施設だけに、症状が重くなって転校してくる児童生徒も少なくない。

 4年ほど前、重い病気の女の子がいた。これまで治療で勉強する機会がなかったため、約1年間、教室で楽しそうに授業を受けていた。「教科の勉強ができて楽しかった」。最後の言葉が、今も塚辺さんの心に深く刻まれている。

 命の灯が消える直前まで、懸命に学ぼうとする子どもがいる。塚辺さんは、院内学級がそんな子どもたちの学びの意欲に応えてあげる場だと思っている。
 「子どもたちは学校での勉強や遊びを通して自分の成長を確認できる。われわれは子どもたちに普通の学校生活を送らせてあげたいんです」

 6月、分教室にとって一番うれしい日を迎えた。小2の菅原真優さん(7)が退院する日だ。この日は大安。入院生活が長かった子どもの多くは、吉日に退院するという。

 残る子どもを気遣い、セレモニーはささやかに行われる。授業終了後、同級生と教師数人が集まり、「たいいん おめでとう」と書かれた色紙を手渡した。
 「ちりょうをがんばったから元気になれたんだね」「友だちいっぱいつくってください。わたしも頑張るからね」

 ぬくもりあふれるメッセージを受け取った真優ちゃんは「きょうは本当にうれしい。退院できてよかった」とあいさつし、みんなに見送られながら教室を後にした。
 子どもたちが退院する日、塚辺さんは不思議と寂しさが募らないという。「子どもたちにとっては原籍校に通うのが一番。晴れがましい日だからこそ、笑顔で送り出してあげたい」

 分教室に顔を見せなくなったら元気の証し。入院中の子どもたちがみんなそうなることを、塚辺さんは待ち望んでいる。



2009年07月25日土曜日
$早く学校へ行きたいな
$早く学校へ行きたいな
まゆっちが新聞に、記載されたものです。