言われた方へ歩いていくと、成る程。
突き当たりにガラス張りの部屋がある。
其処にはセキュリティーガードのような40代くらいの男性職員が立っていた。
「Hello!」
一見、厳格で怖そうな場所のように思えたが、挨拶を交わすと オージーらしい陽気な笑顔。
ほんの一瞬で、その場の雰囲気も和らいだ。
「実は・・・」
事情を話すと、即、私の名前と国を聞き、リストを見た。
「残念ながら、今のところ、ここへは届いていないね。しかし、今日、紛失したのなら、今夜か明日になって、誰かが見つけて届けてくれることもあるから」
届いていないのか。
もろにがっかりした私は、西洋人にも、それと分かるくらい落胆した表情になったのだろうと思う。
先ほど、リストを見て、私の名前が無いといっていた男性は、ちょっと考えた後、私に電話番号を書いた紙を手渡しながら話し出した。
「ここもそうだが、何処へ最初に届けられようと、バスポートの場合は、数日間、保管された後、最後は必ずイミグレーションへ移動するシステムになっているから、其処へ電話して貴方の名前と連絡先・・・メールアドレスを知らせておくと、即、連絡が来るよ。
電話番号を教えるから」
「ありがとう・・・」
差し出された紙を力なく受け取りつつも、会釈し、その場を立ち去ろうとした。
「あ! ちょっと待って! ここの電話を使いなさい」
呼び止められて振り返ると、今度は瞬きしながら更に言った。
「いや・・・。自分が電話してみよう。 もう一度、貴方の名前は・・・?」
そういうが早いか、もう電話をかけていた。
番号だけ回して私に受話器を手渡すつもりだったようだが、思い直したように、彼が電話で聞いてくれている。
どっと疲れて英語が頭から飛んでいた私にとって、英語が達者なオージーが事情を話しながら問い合わせてくれる事は、
とても、とても、有難かった。
私を呼び止めてから、メモを取り、電話で問い合わせる姿を ぼけ~と眺め、最後の望を彼に託したのであった・・・。
