私生活を多忙に費やしている間に更新がずいぶん滞ってしまいました。
前回は少女のための文学を紹介したので、今度は少年のための文学を。太宰治と同時代に活躍した作家、織田作之助の『青春の逆説』です。
主人公は大阪に生まれた豹一という一人の男です。彼は幼少期に母親と男の生々しい話を聞いて、女性への嫌悪感を抱いたまま、かなり初心ともいえる少年に育ちました。そしてそのまま旧制第三高等学校(現在の京都大学に似た立ち位置)に入学。故あって中退し、新聞社に勤め始めます。幼少から青年期、彼の子供時代から彼の子供が生まれるまでの半生を記した物語です。
『女生徒』とは違ってやや長めの小説となっていますが、内容の面白さにいつのまにか読み切ってしまうような話で、これもやはり、共感性が高いことが面白さの一つに挙げられます。
豹一は幼少の経験から、やや擦れた、というか、拗らせたような少年に育ちます。今風にいうならば彼はきっと『厨二病』でしょう。自分の容姿や頭脳が優れていると思い、周りと違うことがカッコいいのだと陶酔して、ちょっと悪いことを繰り返す。異性になんて興味がないと言いながら、気を向けられることにはドギマギして、でもまだ男友達の方が気が楽だし、なんてのも言う。どうでしょう、身に覚えのある方もいるのでは無いでしょうか。
ですが、そんな彼も大人になり、『厨二病』も落ち着きます。そして一度女優との恋愛も挟みますが、最終的には一般の女性と結婚し、子供にも恵まれます。非常に拗れ、さも異端かのような振る舞いをしていた彼も、結局は普通に落ち着くのです。それがなんとも言えないリアリティと、少し羞恥を招くような共感性を醸し出しているのでしょう。
あの頃尖ってたアイツも、今では随分と丸くなった。でもあの頃は悪くも無かった。自分の半生の追体験をしているような気分になれる小説です。まあ、落ち着いた今だって、それなりに幸せなのでしょうけれど。
さて、太宰、織田ときたら次は彼を紹介しましょうかね。では。