わからなくなってきました | 真夜中の活字中毒

わからなくなってきました

読むたび笑える、元気の出る本。思わず思い出し笑いをしてニヤニヤしてしまう本。
「分からなくなってきました」著)宮沢章夫(遊園地再生事業団主宰
まるで抜け道を見つけるような、鋭くもゆるい視点で、笑いのツボ、言葉のツボを強力に刺激する脱力エッセイが満載の1冊。 数ある著書の中、最初に読んでグッときた作品です。

多彩なエッセイ、コラムの中でも、特にグッときてしまったのが、タイトルにもなっている「わからなくなってきました」。
点差が縮まり、逆転の可能性も出てきた9回裏、2死満塁の場面で登場する絶好調の3番打者。そんな緊張の場面でアナウンサーは叫ぶ。「わからなくなってきました」
スポーツ中継でよく聞くこの言葉、この「わからなくなってきました」を様々な場面にあてはめてみたらどうなるか。 レストランへ行ったら、タクシーに乗ったら、いくつかの場面を想定してもどうもなかなかしっくりこない「わからなくなってきました」。 しかし、ついに発見。「わからなくなってきました」がぴたりとくる文学を・・。
ある文学者の作品にぴたりときた「わからなくなってきました」の奇妙なマッチングに、笑わずにはいられません。 ふと電車でそのフレーズを思い出すたびにおかしくなってしまうほど、はまった人はとことんはまる脱力マジック。

時々、「わからなくなってきました」を使いたくてしょうがない私は、想像をしてみる。
例えば電話。
「わたくし、**会社の**と申します。**さんいらっしゃいますか?」
「**は外出のようですが、わからなくなってきました」
例えばコンビニ。
「こちら温めますか?」
「うーん。わからなくなってきました」
わからないのは、そんな事を言われた相手である・・。

でも、宮沢章夫氏の発見した文学と見事にマッチングする「わからなくなってきました」の威力には到底かなわないので、笑いたい時にこっそり出してこの本を読んでいる。

そして、たまにアナウンサーのように堂々と叫びたい。「わからなくなってきました」と。




著者: 宮沢 章夫
タイトル: わからなくなってきました