2006年はTMR10周年という事で、セルフカバーアルバム発売を皮切りに、そのアルバムを引っ提げてのツアー。
そして、6月にはベストアルバム。さらに、年末までライブと活発に活動していたのですが、
その年の暮れに大きな動きが起こりました。

前回の終わりにちょこっと触れた通り、西川さんの音楽活動における別動隊としてのバンドを発足させ、2006年12月にデビューしたのです。
バンド名は

abingdon boys school

「アビングドン ボーイズ スクール」と読みます。
バンド名の由来はイギリスにある寄宿学校のAbingdon Schoolから。こちらは「アビンドン・スクール」って読むみたいですね。「グ」の扱いが難しい。
ということで、バンドのロゴやメンバーの衣装もその学校を意識したものになっていて、イギリス感が滲み出たものになっています。

ただ、音楽性はイギリスってわけでも無く、西川さんが長年渇望していた純然たるロックサウンド。
ロックと言っても結構色んな要素が入ってますけどね。メンバーの持つ特性たる所以でしょう。
あっ!メンバーの紹介をまだしてませんでしたね。

ボーカル西川さん
ギターには前回名前が出た柴崎浩。(アレとはつまりこのバンドだったってことです)
もう一人ギターSUNAO
そして、シンセ&プグラミング岸利至

バンド結成以前から、柴崎さんとSUNAOさんはTMRのライブツアーに参加していました。
西川さんが中心となり結成に至ったわけですが、何故かリーダーは岸さん。実は、メンバー最年少が西川さんだったりする。
他の詳細は某有名事典サイトにお任せします(笑)

基本的に、バンドやユニットを長年やっているとメンバー各々がバンドの方向性とはまた違った活動欲が出てくることは全くおかしいことではありません。
それが、音楽性の違いとなり解散になるのがファンとしては悲しい結末で、
大人の判断で、各々アナザーサイドとしてソロ活動を開始し、バンドとソロを両立できるのが上手な活動形態といえると思います。

例えば、上手な使い分けとして思い浮かぶのはL'Arc~en~Cielでしょうか。
特に、ボーカルのHYDEさんはラルクではやりにくい方向性をソロで、若しくはユニット(VAMPS)で、遠慮無く吐き出していますよね。
でも、最近出たテレビ番組でHYDEさん自身の作詩曲とはいえ、ソロで【HONEY】を演っているのを見て、あっ…そこの境界線取っ払っちゃったのね…とちょっと不安というか心がザワつきました。

逆に、両立でどうにか踏ん張ってほしかったのがWANDSでしょうか。
WANDSというかボーカルの上杉昇さんですね。
自身が望むオルタナティブなロックの方向性とレコード会社が望むポップなロック路線が相容れず、ユニットからの脱退となっちゃったわけなんですよね。
多分、両立どころかポップ路線を全くやりたくなかったんでしょうね。
ソロで好き勝手やって、ユニットでファンの期待に応える。こういう判断に至らなかったのは若さ故なのかな…
デビューの頃からライブをやってきたわけでも無かったので、ファンとの距離があまり近くなく、ファンに対しての気持ちがあまり無かったのかもなぁ。
両立しているアーティストって大体、ファンサービス良いですもんね。(一部、随分と金を徴収するなぁと感じるバンドもあるけど…)

で、今回の西川さんの決断。
一般的なケースと違い、メインがソロで、別軸としてバンド活動を始めたわけです。
が、TMRはソロであっても実態は全くソロでは無い。西川さんが主体であっても、やはりスタッフを含めたチームプロジェクトってことなのでしょう。
そして、これまでの音楽性で付いてきてくれた多くのファンがいる。
ファンへの意識が高い西川さんですから、やはり、TMRで好き勝手できないと考えたのでしょうかね。守るべき一定の枠組みがあると。
そして、純粋にバンドとして、バンドメンバーでシンプルに音楽を作りたかったってことなんでしょうね。

そんな様々な思いが結実して実現した今回のバンド。
2005年辺りには既に結成し、作業は始まっていたようです。

バンド名義での作品発表前に、
2005年3月15日発売【LOVE for NANA ~Only 1 Tribute~】という漫画『NANA』のトリビュートアルバムにて【stay away】という楽曲を発表。
 

さらに、同年12月21日発売の【PARADE ~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~】というBUCK-TICKのトリビュート・アルバムではBUCK-TICKの【ドレス】をカバー。
 

そして、前回紹介したTMRのセルフカバーアルバム【UNDER:COVER】内の数曲もこの体制での制作だったようです。

そして、満を持して2006年末にシングルデビューと至りました。
※それと、今後バンド名表記は「abs」と略させて頂きますね。毎回「abingdon boys school」は煩わしいのでm(__)m


1st Single:INNOCENT SORROW
 

2006年12月6日発売。

基本的にabsの作詞は西川さんが担当。作曲は柴崎さんと岸さんが大半を占め、たまにSUNAO楽曲が登場するといった比率です。
今作は柴崎さん作曲。

明らかに、TMRとは違う完全なバンドサウンド。オルタナやラウド要素が入っている感じでしょうか。
まぁ、柴崎さんが以前所属していたWANDSの第2期後期やal.ni.coを聴いていればすんなり入れるでしょうし、意外とポップな要素も入っているし、疾走感のあるメロディになっています。

 

 

ポップな要素はタイアップに要因アリって所でしょうか。
アニメ『D.Gray-man』のOPに起用されたんです。
実は、absは今後もアニメやゲームのタイアップが多い。これはほぼほぼ西川さん経由でゲットしたのでしょう。
それもあってかゴリゴリのロックを土台としながらも、若干のポップ感を置き去りにしない楽曲が今後も続いていきますし、
タイアップやそういった大衆を無視しない楽曲をリリースしたことがこのバンドの一定の成果としてしっかり数字に出たような気がします。

初登場5位。初動約4万6000枚。累計では約8万6000枚。
数字として評価しにくい部分もあります。
西川さんとしてはTMRの前年8月以来のシングルで、その時は初登場1位で、累計でも約18万枚でしたから、その数字と比べると結構下がっています。
一部の既存TMRファンにはこのabsの音楽性が受け入れられなかったのかな?という考え方は出来ますね。
が、別名義のデビュー作品であり、そもそもTMRと比べると一般向けではない音楽性を考えると、まぁ、まずまずの結果なんじゃないかとも考えられますね。
10万売れていれば御の字と言えたでしょう。惜しかった。

c/wには【Fre@k $HoW】という岸さん作曲の楽曲。
まぁ、説明するほどじゃないですが、「@=a」で「$=S」ですよ。
いつ頃からか「a」を「@」表記にする遊びが増えてきたなぁ。
こちらは全英詩で大衆要素排除のラウド寄りの激しいロック。部分的に声が加工されてたり、岸さんの色が出てるのかも。
こちらの楽曲は欧州向けのアルバムには収録されましたが、基本的にオリジナルアルバムには収録されてないので、若干入手が難しい。iTunesでも無い。


2nd Single:HOWLING
 

前作から約半年ぶりの2007年5月16日発売。

アニメ『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』のOP。
前作同様、柴崎楽曲で楽曲の系統も同じ。前作ほどサビのインパクトに欠けるかなと感じました。個人的には印象に残りにくい。
順位こそ初登場4位で前作を上回りましたが、初動は3万5000枚、累計約6万枚で売上としては前作を下回りました。

 

 

c/wの【NERVOUS BREAKDOWN】も前作のc/w同様、その後の収録は欧州向けのアルバムオンリーで、他のアルバム未収録。
ということで、入手が難しい。
これも全英詩なんで、最初から海外を考えての制作だったのかな?
前作同様、表題曲よりハードで、しかも若干渋めだけどメロディは悪くない。というか、良くないか?表題曲よりこっちの方が私は好き。
柴崎楽曲です。


3rd Single:Nephilim
 

2007年7月4日発売。

今作のタイップはゲーム。
そして、表題曲の作曲は岸さん。前2作とは明らかに毛色の違う楽曲で、テンポはミディアム。
ギターもスローに1音1音聴かせる感じ。荘厳さも感じる重厚さと洗練された音のバランスが光る。バンドの音楽の幅を感じさせる1曲だと思います。

 

 

c/wの【LOST REASON】。こちらは柴崎楽曲。
この楽曲については、この後に発売されるオリジナルアルバム収録のバージョンを聴いて頂きたい。
その後のライブでの披露を考えるとこれが完成版なんじゃないかとも思えるんです。
ということで、この楽曲についてはその時に詳しく。
原曲はやはり欧州向けアルバムのみ。

今作の結果は初登場5位。初動は約2万7000枚で、累計は約4万枚。売上的に下降線。

やはり、楽曲が基本的にハードですし、カラオケで歌えるような生易しいものじゃないですから、自ずと視聴層は集約されてきてしまうのかも。まぁ、西川さん的にこのバンドは大衆に心を売る類のものじゃないでしょうし、
TMRを超えるヒットは最初から考えてないとも思えるので、一定の評価を得られれば十分だったんじゃないでしょうかね?
実際、TMRよりabsが好きって層も生まれましたしね。
一つ言えるのは、今の所はCDジャケットが紋章のみで、人物が写ってない。

この地味さが、西川さんファン以外に浸透しない一因だったのかも?

さて、今回の復習はabsの紹介を始めるにあたっての前段部もあり、文量が多くなってしまったのでここらで終わりにします。
次回もabs中心の紹介になります。
次回に続く!