2002年、試運転。
2003年、本格再始動。
そして、2004年になり『ZARD第2章』後、初のオリジナルアルバムの発売です。

2004~
10th Album:止まっていた時計が今動き出した
2004年1月28日発売。

01.明日を夢見て
02.時間の翼
03.もっと近くで君の横顔を見ていたい
04.pray
05.出逢いそして別れ
06.止まっていた時計が今動き出した
07.瞳閉じて
08.さわやかな君の気持ち(Album Ver.)
09.愛であなたを救いましょう
10.天使のような笑顔で
11.悲しいほど 今日は雨でも


確か前作は10周年記念アルバムとなっていましたが、10枚目のオリジナルアルバムの方が記念にしてもいい気がしますよね。
前作【時間の翼】というZARD史を汚した駄作から約3年。もちろん、ZARDのオリジナルアルバムのインターバルとしては最長になりますが、
病気療養で1年強の活動休止期間があったと考えると、復帰後に意欲的に、そして順調に制作してたんだなって感じますよね。

今作はリリース自体久しぶりのオリジナルアルバムなわけですが、充実度でも久しぶりに満足感を得られると断言できる良質なアルバムです。
全11曲中、シングル曲4曲、アルバム楽曲7曲。c/wもセルフカバーも無し。久しぶりに新曲の多いアルバムとなりました!
1995年発売のアルバム【forever you】の時に今後数作はアルバム楽曲が少なくなり残念になると述べましたが、そういった意味では9年ぶりに純然たる本物のオリジナルアルバムに出逢えたと言ってもいいかもしれません。

1曲目【明日を夢見て】は表記は無いもののミックスし直していて、アレンジの音がシングルより強めにクリアに。
シングルではもわ~っとしていたものが、こちらでは輪郭がくっきりした感じになり、明らかに良くなりました。
シングル版より断然にこっちを聴くべし!

2曲目【時間の翼】はご存知の通り曰く付きの楽曲で、前回のアルバムにて表題曲でありながら未完のまま収録されたやつですね。
その完成版が収録されました。前作【時間の翼】の時にもチラッと触れたとおり、完成版は編曲者が変更されています。
徳永氏⇒小林さんへ。復帰当初の坂井泉水は小林編曲が体に合っていたのでしょうかね?
何か、コレじゃない感を抱いてしまいました。サビにパワーのあるメロディーに癒し系のアレンジがあまりマッチしていないような。
徳永版の完全版が聴きたかったですねぇ。

4曲目【pray】は今作唯一のドストレートでシンプルなバラード。このアルバム発売後に、唯一開催されたライブツアーでも歌っていましたね。作曲が徳永氏。

5曲目【出逢いそして別れ】は1995年のシングル【Just believe in love】以来の作曲提供となったTUBEのギタリスト春畑さん。
タイトルから結びつきませんが、アラビアンな前奏から異国感漂うサビ。ちょっと異質な楽曲。でも、悪くない。
編曲も春畑さん。+池田さん。アウトロは名曲【異邦人】みたい。あっ!【異邦人】と言えば、この前年にB'zの松本さんの企画でこの歌を歌ってたんですよね。それについては復習の最後の回で述べたいと思います。

そして、6曲目【止まっていた時計が今動き出した】。表題曲である時点で重要度が高いのは分かると思いますが、今までのアルバム表題曲とは比べ物にならないくらい意味深で、坂井泉水の決意表明とも言える楽曲です。
近年の坂井泉水のプライベートにおける体調不良や、ZARDとしての伸び悩みなど様々な面で閉塞感を感じていたのでしょう。
そんな閉塞感[=止まっていた時計]を打破[=時計を動かす]して、再び私は前に進んでいきますよ。といった決意として私は受け止めましたね。
個人的な事を言えば、私自身もこの時期は色々と行き詰まりを感じていたので、この歌にはとても励まされましたし、リンクしましたね。
作曲はZARD楽曲唯一登場のGARNET CROWのボーカルとしてお馴染みの中村由利さん
曲調はメロは歌謡曲的な渋さで、サビ含めテンポは遅めながら、一音一音、言葉を噛みしめながら歌唱しているのが分かります。
どちらかと言えば、初期~全盛期頃のアルバムにあった懐かしさもありますね。
編曲は徳永氏。イントロや間奏等随所でギターを押し出したり、タイトルの「時計」を活かし、秒針的な音色も効果的に入れてあります。
とにかく、このアルバムの根幹であり、『ZARD第2章』最重要楽曲とも言える楽曲。要チェックです。テレ朝系のドラマの主題歌にもなっていましたよ。

7曲目【さわやかな君の気持ち】のAlbum Ver.は結構印象変わっています。打ち込み主体のシングル版と違い、バンド仕様と言っていいですね。
言ってみりゃ、スタジオライブバージョンみたいな感じですよ。これはこれでアリ!

9曲目【愛であなたを救いましょう】は作曲が栗林さん。まだ、ストックが残っていたようです。ディープでマイナーな渋い楽曲。
正直言って、ZARD向きじゃない。坂井泉水ってテンポ崩して歌ったりするのはお世辞にも上手いとは言えません。

10曲目【天使のような笑顔で】。9曲目と対照的に明るく爽快な楽曲。作曲は大野さん。結構、良い曲ですよ。

11曲目【悲しいほど 今日は雨でも】。タイトルから受ける印象と違って、アップテンポな楽曲。
ZARDのアルバムというとラストはバラードやスローテンポな楽曲で締めるというのが定番となっていましたがそれを覆してきました。
アルバムタイトル的にそれが正解だと思いましたね。
とにかく、このアルバムは今までのオリジナルアルバムの中でもトップクラスで元気が出るアルバムになったと感じました。
歌詞も前向きなものが多かったですし、そういった流れならバラードで締めるより、こういうアップテンポで、タイトルに「雨」とありますが、
晴れた日に心地良く聴ける楽曲で締めるってのはナイスチョイスだと思いましたね。
作曲は大野さん。このアルバム、11曲中6曲が大野さん。
逆に、初めて織田楽曲がゼロのアルバムとなりました。
それでも、ZARDとしての良さは十二分に出ているし、全盛期とはまた違った、時を経たZARDのコクが出たアルバムになったと思いますね。

結果は初登場2位。1993年発売のアルバム【揺れる想い】以来6作連続で1位を獲得してきましたが、遂にオリジナルアルバムでの1位獲得が途切れてしまいました。
初動は約11万ですから、前作から約半減といった所。正直、この結果に驚きはありませんし、近年の結果からしても妥当な売上だとは思います。
ある意味、初動で二桁いけただけでもまだ良いのかなと。累計でも約20万枚。伸びませんでしたね。
結局、作品を送り出しても、世間にあまり届いてないんですよね。だから、近年の売上低迷は作品内容云々の次元じゃないかもしれない。
ただ、そういった時期に変な、中途半端な作品を出すと、既存のファンまで離れていってしまうから、いつの時だって手は抜けない。
前作【時間の翼】は非常に中途半端な作品で、一部から酷評を受け、ファン離れを誘発してしまいました。
しかし、今作ではほぼ不満混じりの感想は耳にしません。皆の求める”ZARD”が帰ってきた!と歓迎されていた印象があります。
つまり、今作は新しいファン獲得はほぼできなかったけれど、今までのファンを繋ぎとめるに十二分な傑作だったんじゃないかと私は思います。

ちなみに、この週の1位。何だと思います?
実は、QUEENのアルバムだったんです。【ジュエルズ】という日本独自企画のベストアルバム。
この年、木村拓哉主演のフジ月9ドラマ『プライド』の主題歌や挿入歌としてQUEENの楽曲がふんだんに使われまして、
それがきっかけで日本で何度目かのQUEENブームがやってきてたんですよ。
偶然にも今!これ以来のQUEENブームが再びやってきているわけで、今これを書いていてちょっと懐かしく、そして驚いてもいます。
QUEENって本当に凄いよね。死後、何度もブーム起こせるってあり得ませんよ。
ZARDも坂井泉水死去直後は話題になり、過去の作品も数作品売れたりしましたが、今後話題になったりするってことはほぼ無いでしょうねぇ。



ここで次の作品を紹介する前に、ZARDにとって重大な出来事が起こった…いや、”起こした”ことをお伝えしておかなければいけません!
3月から7月にかけて、ZARD初にして、最後の全国ツアーが開催されました!全11公演。日本武道館でファイナル。
あまりにも遅すぎる初ツアーではありましたが、ようやく、本当の意味で世間に歌声を伝える機会を設けたって事です。
そして、後々になって考えると、この時に実現していて本当に良かったと思えますよね。
この機会を逃していたら、多分、ツアー無く去っていたことになっていたのですから…
そんな”超”貴重なライブ映像は翌年に映像作品として発売されました。

時系列的に発売はこの位置じゃないのですが、開催紹介ついでに紹介しちゃいたいと思います。

DVD:What a beautiful moment
2005年6月8日発売。

 

Opening[Instrumental]
・永遠

01.揺れる想い
02.この愛に泳ぎ疲れても
03.もう少し あと少し…
04.あの微笑みを忘れないで
05.世界はきっと未来の中
06.You and me (and…)
07.もっと近くで君の横顔見ていたい
08.明日を夢見て
09.瞳閉じて
10.心を開いて
11.あなたを感じていたい
12.愛が見えない
13.Today is another day
14.来年の夏も
15.My Baby Grand ~ぬくもりが欲しくて~
16.君がいない
17.マイ フレンド
18.負けないで

メンバー紹介[Instrumental]
・Good-bye-My Loneliness
・君逢いたくなったら…
・きっと忘れない

19.pray
20.止まっていた時計が今動き出した
21.Don't you see!


結構、全盛期から最新までバランス良く散りばめたセットリストですよね。
アルバム曲が6曲もあるのは坂井泉水のこだわりでしょうか。
ファンの希望と自分の希望を上手く織り交ぜてあると思います。唯一悔やまれるのは、【永遠】がインストのみだったことかなぁ…
それから、真ん中辺りの休養明け楽曲3連発はアコースティックアレンジです。

 

ちなみに、実際のライブでは1曲目の後に【眠れない夜を抱いて】と【IN MY ARMS TONIGHT】の2曲がメドレー披露されていたようですが、
今作未収録。何故にカットしたんだー(怒)
それから、ファイナルでのみこのツアー開催中に発売された新曲【かけがえのないもの】(この後紹介します)が披露されたのですが、
それも未収録。この曲に至っては、この1日だけしか披露していない”超”×”超”貴重映像なんですが未だ公開無し。
あるならもったいぶらないで出してくれよー。

緊張からくる硬さがあるのは否めませんが、それを抜きにしても、坂井泉水の歌声はCDクオリティからそれほど遜色なく、今まで一部から疑問視されていた坂井泉水の歌唱力を世間に示すには十分のクオリティには達していたと思います。
願わくば、全盛期に単発でもよかったのでライブを開催してくれていたらなぁーって思いますが。
実際、病気休養明けの復帰後も体調は完全回復とまではなっておらず、体調の一進一退はあったようです。
そんな中でのツアー開催は本人としてどのような決意だったんでしょうね?相当な決意だったのかなぁ。


38th Single:かけがえのないもの
ツアー開催中の2004年6月23日発売。今作も諸事情で発売が遅れた模様。

TBS系『恋するハニカミ!』のテーマソングでしたね。懐かしい。
個人的な感覚としては、前シングル【もっと近くで君の横顔見ていたい】と並ぶ『ZARD第2章』期の名曲だと思います。
サビに力強さのあるバラード楽曲ですね。
作曲はこれもまた大野さんなわけですが、メロディがとにかく美しい。大野楽曲の中でも確実に完成度の高い楽曲。
編曲は小林哲さん。前回、酷評してしまいましたが、この楽曲に関しては文句無いです。
ピアノ伴奏を軸に、まぁ、それでもやっぱりあっさり目の味付けなわけなんですが、
この楽曲に関しては坂井泉水の歌声が引き立てば良いのかなと。そう感じます。
2007年に行われたファン投票では総合3位。シングル曲では1位と人気の高さも証明。

休養明けのZARD楽曲って、90年代末期の無駄に凝った装飾系アレンジが無くなり、ZARD本来の良さである坂井泉水の歌詞と歌声が
ストレートに聴き手に刺さる楽曲が戻ってきた感覚があります。
90年代末期の試行錯誤期は、そういった本質を置き去りにしてしまい、変化球の楽曲や表面的な見栄えに意識がいったアレンジの方に、
きっと無意識に向ってしまっていて、ファンとの距離が離れていったのかなと思います。
それが、病気を経験して「伝える」ことの意識を強く持ったのかなと。長く活動していながら、ファンとの関わりがほぼ無く、
制作活動の中で”ファン”に対する意識が薄れてきたものが、休養を経てある意味デビュー後一番強く芽生えたのではと勝手に推察しています。

2曲目【無我夢中】はZARDらしくない楽曲。クラブ仕様的なリミックス。
作曲はこちらも大野さん。アップテンポな楽曲で、歌詞もいつもの感じと違った感じでちょっと遊んでみました的な作風。
ちょっと歌唱がキツそうに聴こえるのが気になる所。
c/wでこういう実験的なものやお遊び感覚の楽曲を試してみるのはアリだと思います。シングル表題曲でやっちゃうと大博打というか無謀ですけどね(笑)

3曲目には先述したライブのオープニングで流した【永遠】のインストゥルメンタルが収録されました。(What a beautiful moment Tour Opening Ver.)。オーケストラアレンジです。

初登場4位。累計約4万6000枚。微減。まぁ、余程大きなきっかけが無い限り売上の飛躍はもう無いでしょう。楽曲は良いだけに何とも歯がゆいですけどね。


ライブについて触れたら文量が多くなってしまったので、紹介予定してたもう1枚のシングルは次回に持ち越します。
次回に続く!