ベッドで茫然自失していた私を横目にしながら、彼はTシャツを着た。

「サエコさん、顔が…まるで別人。女の子になってる、ははは✨うっとりしちゃってますよ。…きもち、よかった?」

無言のまま頷く私に

 
「か〜わいいっ!」


とはしゃぎながら、彼は私の髪をくしゃくしゃした。

「なんで…こんなに、いろいろ知ってるの?  女性経験少ないとか、大学生のとき発症してオペして抗がん剤の治療して…って言ってたじゃない」


彼は窓の外を見ながら言った。


「秘密!いーの。」 


黙り込む私に気づき、彼は話し出した。


「僕、サエコさんと旅行に行かれる!ってなってから、まずめちゃくちゃエッチのこと勉強したんですよ、本読んで。そういう本、あるんです。」

 
えっ、本? なんじゃそれ。 


「セックスはね、自分だけ…つまり男だけが一方的にきもちよくなっちゃ、ダメなんですよ。二人できもちよくならなきゃ。で、勉強したんです。それで…」


少しためらいながら彼は言った。


「その、本を読んで、僕、実際…試してきたんです。あっ、練習してきた、って言い方が正しいか」

どっ、どこでだよ!練習って。

私は、固まったまま彼を凝視した。


「あ〜💧たからっ、、その、、あーッ言いたくないっ。でも、サエコさん、そんな顔しちゃってるし。ん、だから。僕、風俗のお姉さんに研修してもらったんですよ。少し年上の彼女ができて、今度旅行でエッチするからいろいろ教えてって。」


セックスの仕方を風俗に習いにいく…笑う人もいるだろう…でも、私はそんな気になれなかった。それどころか、ジワジワとした感動が押し寄せてきた。

今どきいるだろうか。好きな女を悦ばせるために、こんな努力をする男が。それとも、余命宣告という特別な状況のせいだろうか。

とにかく私は一気に恋に落ちた。

もはや余命宣告された若い男の子に

「少しでも幸せになって欲しい」

などと大人ぶっている余裕はなくなっていたし、何より身体が…オンナが彼を欲した。

今後の人生で、彼以外の男に抱かれることがあったとしても、この快感を得ることはないだろうとさえ思った。

自分の中にそんな感情があったことにも戸惑う、更年期女子。

人生は思わぬ方向に進路変更した。