再会
「ご乗客、まことにありがとうございます。党内は、まもなく九州航空と着陸いたします。安全のため、シートベルトをおしめください。」
飛行機の中で、CA(キャビンアテンダント)のアナウンスの声が響き渡る。乗っていた客は、みんな腰にシートベルトをまく。
麗華(麗華)は、そのアナウンスの声をきき、飲み物のワゴンをひいて、自分も席につこうとしていた。
その時、トイレからでてきた男の人にぶつかる。
「申しわけございません、お客様。お怪我はされてませんでしょうか。」
「あ、いえ。いいんです、大丈夫ですから。」
そう言って、男の人は顔をあげる。その瞬間だった。
麗華の顔が、さっとこわばり、目を見開いたままその男の人を見つめる。
「…………」
男の人も、口をわずかに開いた。ふたりは、黙ったまま見つめあう。
「ちょっと麗華。何やってんの。早くしないと。あっ、お客様。まもなく着陸いたしますので、ご自分の席にお座り、シートベルトをおしめください。」
奥から、麗華の先輩がきて、そう言った。そして、その男の人ははっと我に返った。
「あっ、は、はい……。」
男の人はチラッと麗華を見て、麗華に背を向ける。
「あっ、あの……。」
わずかに声をあげたが、男の人は聞こえなかったように早足に去っていく。
「ちょっと。キャビンアテンダントが飛行機での規則破ってどうすんの。早くシートベルトしめないと!」
先輩はそう言って、麗華の腕をひいた。
「あっ……。」
麗華は、男の人の方を振りかえながら、自分の席へと戻っていった。
「党内は、無事着陸いたしました。足元に気をつけながら、降りてください。」
客達は、シートベルトをあけ、出入り口のほうへと向かった。
「御乗客ありがとうございます。」
そう麗華たちは、飛行機から降りる客達に言っていた。だが、なんとなく、麗華ひとりだけ、元気がなかった。うつむいたまま、頭をさげている。
あの男の人が来た。男の人は、麗華に向かってきた。麗華は、うつむくように頭を下げたままだ。
「さっきの人だよね?」
麗華は、思わず顔をあげる。まるで、自分のことを覚えてないような言い方だ。
「ごめんね。痛かったら、ほんとごめん。」
「えっ、あっ、いえ……。」
「じゃ。楽しかったですよ。空も。」
男の人は微笑み、丁寧に頭をさげると、降りていった。
いかないで――――――――。そう言いそうになった。どこにも行かないで。やっと会えたんだから。やっと……。
「何。なんかカッコよくない?」
後輩達が、あの男の人のことで騒いでいる。
「もしかして麗華先輩に惚れちゃったんじゃないですか?あの人。」
「やあだー。なんでいっつも麗華先輩なんですか?ずるーい。」
「あんたもお客様にモテたかったら、もうちょっと一人前のCAになること。わかった?」
「はーい。」
麗華は、後輩達の話なんて聞いていなかった。ただ、あの人のことでいっぱいだった。
あの人に出会っていなければ、お互い幸せだったに違いない……。
あなたに出会っていなければ、わたしはキャビンアテンダントではなく、ちゃんとした桐島財閥の女社長として働いていたのかもしれない。それで、出会ったとしたらあなたとは敵同士として働いていた。
それが、あたしの運命だったはずなのに……。
十四歳で、出会ったのがまちがいだった。そして、あの日あの時、何が何でもあの場所にいるんじゃなかった……。
真紅のバラ
真紅のバラ
あなたに出逢ってしまった―――――――。
後悔をするということは、このことを言うのだろうか。
愛さなければ、よかった――――――。
ふたり出逢わなければ、幸せだったのかもしれない――――――。
だが、その運命の赤い糸は、あっけなくちぎられてしまって。
それでも、ふたりは愛し続けた……。
