ここ数ヶ月、たまに利用するペットショップへ出向く度に売れ残っていた羽衣梵天さんーー
余談ですが、しかし梵天さんって、どうしてこうなったのだろう。遺伝子の不思議。
我が家に貼ってあるセキセイポスターの中でも、圧倒的な存在感を放つ梵天さん。
イカしたヘアスタイル。好き。
ーー良いお家に行くんだよ…と心の中で念じつつ、後ろ髪引かれながらも、いつもペットショップを後にしていた。
さすがにもう居ないだろう。というか、やはりというべきか、居た。
しかもその日はケージに張り付き、私や子供達のいる場所へ必死に移動し、出してアピールがすごかった。 甘えた声も出している。体調が悪いのかもしれない。
我が家にはもう、そろそろメガバクテリア治療完了のキキボーがいるし、ファジャ先輩だっている。
ダメだダメだ…と、心を鬼にして、先輩達のグッズなどを見て回る。
が、梵天さんのケージに張り付き離れない人が約2名。
他ならぬ、我が娘と我が息子である。
息「もうさ…連れて帰ろうよ」
私「わかるよ。わかる。けどさ、せっかくキキさんボーさん病院終わって、やっと我が家には平穏がさ…」
息「そうだけどさ。俺のお年玉使っていいからさ」
娘「こんなに遊んでアピールしてるの見たらわたしもダメだわもう…わたしのお年玉も使っていいからさ」
私「けど。今はお年玉で買えても、なんかこの子、病院長引く気がするんだよね。ちょっと様子おかしいし。」
娘「病院って全部でいくらかかるの?」
私「わからないけど、何万円もかかることもあるし、何か病気だったらもっとかかることもあるよ」
息「俺の小遣いとか全部使お」
娘「私の貯めてるお金もおろしていいよ」
さて、どうしたものか…
お金だけの問題でもない、これは命で、上手くいけば10年以上一緒に暮らしていく家族。
既に生後約4ヶ月で、ケージにへばりつくだけの元気はあるようだけれど、なんか、どこか違和感が。
根拠はないが、何かは持っている予感。
頭の中で、思いつく問題を一つ一つクリアにしつつ、長い長い会議をしている私達の所へ、店員さんがやって来た。
一部始終とまでは行かなくても、我々のやり取りを聞いていたようで、話が早くて助かった。
店「実はこの子、ここに入荷した時点で、重度の斜頸だったんですよね。もう、180度くらい常に首が曲がっている状態で来たんです。毛並みもものすごいことになっていてボサボサで、艶もまるでないし、下痢も酷いしで、病院に連れて行きました。遺伝子的に、斜頸がよく出るらしい種類ではあるみたいなんですけど、検査をしても、結局これと言った原因もわからず…ビタミン剤を薬に入れてもらって、しばらくは裏で治療に専念して。今も毛艶は悪いですけど、これでも本当にだいぶ元気になったんです。斜頸もほとんど見られなくなって、食欲も元気も今のところはあるんですよね。でも、飛べないんですよこの子、ほとんど。小さい頃の栄養不足なのか、斜頸が影響してるのか…」
私「そのうや糞は?その検査では、メガバクテリアは見てもらいました?」
店「出ませんでした。悪そうな菌は見つからなかったんです。ただ、そのうが少し炎症を起こしてはいたので、炎症が治まればかなり良くなるだろうとは言われたのですが」
私「ほぅ…」
その時はなんともなくても、今はわからないじゃないか!という気持ちも、無きにしも非ず。
が、店員さんの、包み隠さずいろいろと話してくれた誠意ある雰囲気に、とても好感が持てた。
「連れて帰ってくれるのなら、病院で検査を。お金はかかるかもしれないけど、お願いします。このペットショップでは、この子はたまたま病院にかかりましたが、入荷時に全ての子達に健康診断等をしているわけではないですし、ご存知かとは思いますが、今の流通からして、セキセイは特に、何もないほうが珍しいんです。」
そんな個体売るなよ!という声も聞こえて来そうだけど、それは確かにそうなんだけど、それを言ってしまうと、現時点での日本のペットショップ業界は、きっと成り立たない。悲しいことだけど。
店員さんは店員さんで、ペットショップに勤め、生活が成り立ち生きている。
ペットショップに勤めるくらいだもの、きっと動物が好きで、でも好きだけでは通用しないようなことをきっと裏でたくさん見て来て、店員さん達は店員さん達で、きっといろんな思いを抱えている人も多いのだろう。
それこそ国を挙げて制度自体を変えなければ、この悪循環は無限ループな気がする、けど、私個人には何も出来ない。店員さんも、きっと。
「この子は長いこと治療で人と触れ合うことが多かったし、スタッフとのふれあいも多かった子で、人が好きみたいで」
…と、店員さんがケージに手を伸ばすと、スサーっと準備運動を始める梵天さん。
梵天さんは、何をしても、イカした髪型で笑いを誘ってくれるからいいね。
…じゃ、とりあえず病院行くかー!と、連れ帰ることに。
子供達からは、何故か謝られた。
「ごめんね。大変かもしれないけど、、お母さんありがとう」と。
帰宅後、小さな箱から飛び出て来た梵天さんを抱くと、驚くほどズッシリ。
すぐさま体重を計ると、なんと45g…!!
あーあーこんなに爪も伸び放題!!水浴びもしないと、なんか薄汚れてる…!!
…と、いろいろ微調整したい気持ちはあったけど、まずは我が家に慣れてもらう為、グッと我慢。
ケージ内レイアウトも、なるべくこれまで居たケージと近付けつつ、様子を見ながら手を加えて行こう。
ご飯は、消化のいいように、とりきちさんとこのハーブミックスを多目に混ぜてみると、気に入ったようで、美味しい顔をしていた。
うちに来ても相変わらず、ケージにへばりつき、存在をアピールして来る梵天さん。
別室のキキさんボーさんが梵天さんの気配に気付き、苦情レベルで呼び鳴き大合戦も始まり、ひとしきり鳴いたあと、羽を繕い餌をついばみ、ウトウト。初日と思えぬ落ち着きっぷりに、こちらの方がソワソワ。
命名:イトモリさん (おそらく女の子)
由来:※予め。不謹慎でごめんなさい。
ディズニー好きの娘だから、きっと今回もファジャ先輩のように、ディズニーのなんかのなんか、なのだろう…と思っていたのだが、急にハッとしたように娘が言った。
“ねぇ…!この子の名前、イトモリちゃんにしよう!”
イトモリってなんだよ笑 どこから来たんだ笑 と笑って答えると、
“だってほら、見て、この子の頭。映画の、君の名は の、あの糸守町を上から見たところ…” などと言い出したので、本気で吹き出した。笑っちゃダメなんだろうけど、本当だ…!!と。
そんなわけで、糸守ちゃんになりました。
気に入った。奇跡の起きた町。
我ながら、センスある娘だと思う。イトモリちゃん。
病院に連れて行く日まで、とにかく保温と保湿に気を付けて、注意深く見守りたいと思います。


