こんにちは、2階のおばちゃんです。

 

本来、イギリスだけでなく欧米では人や動物の「排泄物」に対するタブーが

根強い傾向にあって保守的な美意識の支配が強いお国柄やねん。

そら、2024年の今ではそんなタブーもかなり薄れてきてると思うし、断片的に

なってきていると思うんやけど。

 

飼っているペットのプープ(うんち)なんて鼻つまみながらも愛おしいやん。

人物A 「見て~ うちの猫のプープ コロコロでかわいくない?」

人物B 「それ便秘ちゃうん?」

っていう会話も今では普通にできるしね。

タブーを作っては破りを繰り返して変化してきた社会のおかげやね。

因みにプープ(poop)はイギリス英語でプー(poo)はアメリカ英語ね。

(そんなもんどうでもええやろうけど)

 

イギリスのコンテンポラリーアートで「排泄物」に対するタブーを破り

物議を醸した代表的なアーティストとしてはギルバート アンド ジョージ (Gilbert and George)さんがいるわ。

彼らの露出狂まがいやうんちや精液の拡大図の作品は有名やね。

1995年に「Naked Shit Pictures」っていう個展をサウスロンドンギャラリーで

やらはっていろいろ論争になったけど、色がカラフルやからか「そんな衝撃的でも

ないやん」って思ったのをおばちゃんは覚えてるわ。

「排泄物も人間の一部やのになんでタブー視するねん」って考えのもと作品を作った彼らはインタビューとか見ると生真面目そうに見えるけど結構フレンドリーな

人らで、ずいぶん前やけど知り合いの人が東ロンドンのDalston Kingsland付近で

よく見かけて何度か一緒にランチしてきたって言ってたの思い出したわ。

因みにギルバート アンド ジョージさんは1986年にターナープライズを受賞して

はるよ。(このころはまだ「排泄物も美である」とは言ってないころ)

 

さてと、この「排泄物に対するタブー」を頭において

ターナープライズの話に行くで。

 

ターナープライズ(ターナー賞)は1984年に始まった賞で、イギリスの歴史に残る

有名なアーティストJ.M.W Turnerさんから名前を取ったはるねん。

イギリス在住またはイギリス人を対象にしてて、テートブリテン(Tate Britain - 

旧テートギャラリー)で毎年贈られる賞で、その授賞式の様子はテレビの

チャンネル4で生放送されるねん。

アメリカのグラミー賞並みに結構豪華でイギリスの有名なセレブリティが受賞者を

読み上げるねん。

受賞したら25,000ポンド(約480万円)の賞金がもらえて一躍有名になるし

アーティストにしたら自分を売り込む良い宣伝になると思うわ。

毎年秋になると今年のターナープライズのショートリスト(大抵5人)が発表されて

12月の授賞式までその話題というか論争というか非難というかで持ち切りになるのがお決まりパターンやわ。

それと同時にショートリストに選ばれたアーティストらの作品が入場料無料で

テートブリテンで展示され、すごい数の人、人、人でごった返すねん。

因みに現在の時点で過去に一度だけやけど、2000年のターナープライズの

ショートリストに選ばれた日本人がいるねん。

インスタレーションアート (空間全体を使った作品)やパフォーマンスアートを

したはるTomoko Takahashiさんでイギリスをベースに活躍してはるわ。

彼女のオンライン作品「Word Perfect」はWordPerfectっていう1980~90年代に

流行ったワープロソフトをパロディ化したウェブプロジェクトやねん。

Microsoft Wordの登場ですたれていったツールやけどね。

「Word Perfect」はオンラインとインスタレーションの両方の作品があって

インスタレーションの方は自分が見つけたデスクトップやスクラップやガラクタが

所狭しと置かれてて一見カオス状態の作品やねんけど、実は結構細部にまで

こだわってアレンジしている感がある、ある意味繊細な作品でもあるねん。 

東ロンドンのアートギャラリーでプライベートビューがあった時に一度だけ見かけてちょっと挨拶しただけやってんけど、ものすごくタフっていうオーラをまとった

強い人で、このぐらいタフじゃないとイギリスの今のアート界で生き残れへん

やろな。。。って思ったのを覚えてるわ。

プライベートビューっていうのは、ギャラリーが展覧会する前日の夕方から

夜にかけて関係者のみに先に作品をお披露目するパーティーみたいなものやで。

Word Perfect (installation)/ Licensed under chisenhale.org.uk

オンライン作品はこっち→ Online_Word Perfect_Tomoko Takahashi

 

90年代中頃まではなんやかんや言うてもイギリスはまだまた保守的な美意識が圧倒的な形で君臨してたと思うわ。

でも1998年と1999年のターナープライズによって、その保守的な美意識の頑丈な壁にヒビが入るようなことが起こるねん。

 

1998年のターナープライズはクリス オフィリ(Chris Ofili)さんが受賞しはってん

けど、彼の作品は象の糞を使ったペインティングやってん。象の糞をそのまま

ペインティングに張り付けたり、作品の土台につかったりしてんねん。

23歳で奨学金を得てジンバブエを訪れたときに、無数の点で描かれた古代の洞窟の

壁画と地面に転がっている象の糞に興味を持たはって、イギリスまで象の糞を

持ち帰らはってん。その時から彼の作品は点で描かれたペインティングで象の糞が

付いたものになったらしいわ。象の排泄物をそのまま作品に使ったというのが本当に衝撃的な出来事やって、その上、ターナープライズを受賞したもんやから大変な

物議をかもしてん。ギルバート アンド ジョージさんの時は、「排泄物」が絵として描かれてたけど、オフィリさんで本物の「排泄物」をそのまま使った作品が出てきて、それがアート界の権威であり品位のあるテートに展示されているというのが衝撃的やってん。

因みに象の糞は臭くなく葉っぱの匂いやねんて。おばちゃんも見に行ったけど無臭やったわ。

 

© Chris Ofili, courtesy Victoria Miro/Licensed under tate.org.uk

 

その次の1999年のターナープライズでは、ショートリストのひとりだった

トレイシー エミン (Tracey Emin)さんの「My Bed」で話題持ち切りやってん。

エミンさんは彼女自身をアートにした作品を作ったはる人やねんね。

むかーし昔彼女がまだ若かりし頃テレビのインタビューで「なんでみんな今まで

自分自身をアートとした作品を出した人がいなかったのか不思議やわ」って言ってたのを覚えてるわ。彼女の発想はコンセプチュアルアートの考え方から来ているのは

確かやね。(コンセプチュアルアートに関してはおばちゃんのブログ「ネオコンセプチュアルアート」を読んでな)

テートブリテンで展示された彼女の作品「My Bed」はお世辞にも綺麗とは言えない彼女の実際のベッドやねん。あることで心が傷ついてうつ状態となった時があったらしく、食事もほとんどせずアルコールばっかり飲んで4日間過ごしたベッドの

ありさまを作品にしてはんねん。なんで心が傷ついたかは述べてはらへんから

知らんけどね。シミのついたしわくちゃのシーツやウォッカの空瓶、使用済み

コンドーム、タンポン、脱いだままのストッキングにたばこなど、あれやこれやが

ベッドの上や周りに置いてあるねん。(っていうかうつ状態前からベッドの周りが

散らかってたんちゃうんやろか?)

これだけでもショッキングでダニだらけとちゃうかとかG出てきそうやって思うん

やけど、トドメとなったのが「生理の血がついたパンツ」があったことやねん。

これは「排泄物」であり「性」でもありで2重のタブーを犯しているようなもんに

捉えることができるから凄い論争が巻き起こったんよ。それがテートに展示されて

いるっていう事実が、前年のオフィリさんの象の糞に続き各メディアが挙って

取り上げ論争を巻き起こしてん。

散々話題になったけど結局、1999年のターナープライズはエミンさんではなく

スティーブ マックイーン(Steve McQueen)さんが受賞しはってん。

彼の映像作品は迫力があって面白かったけど、受賞したマックイーンさんより

エミンさんのほうがあまりにも目立ってしまって、なんだかマックイーンさんの

受賞の話題が小さくなってしまった感じやったわ。

© Tracey Emin/Licensed under tate.org.uk

 

クリス オフィリさんもトレイシー エミンさんもタブーに挑戦しようなんて考えは

全くなかったやろうね。

偶然、彼らの作品にタブーとされているものが含まれていただけで、本人たちは

それがタブー視されるという感覚もなかったと思うわ。彼らにとっては「作品」

というだけやったやろうからね。

でも、1998 年と1999年のターナープライズは最大のタブーである「排泄物」が

イギリス中で大きな話題になり、イギリスの人々の美意識を揺るがすようなこと

やったのは間違いないわ。

そやけど、そのバッチイ「排泄物」が権威あるギャラリーにアート作品として展示

されたからこそ、その「排泄物」が「排泄物」で無くなって「バッチイ」部分が権威あるギャラリーによって無菌化されたんちゃうやろか。

それによって作品が受け入れられた部分も大いにあったと思うで。

いい意味でも悪い意味でもそのタブーが取り上げられ議論され断片的なものに変化

していく一方で、イギリスの保守的な美意識は一旦ヒビ入ったけど直ぐに

クラックフィラーで「はい、元どおり」に修復して「ほな、さいなら」で表舞台から去ったけど、今も根底で君臨して支配してるわ。

 

あかん、長なってしもた。

スタッキストについても書こうと思たけど、次にするわ。

おばちゃん普段はそんなベラベラしゃべるほうとちゃうねんけど

書くと長なんねん。

 

読んでくれてありがとうね!