こんにちは、2階のおばちゃんです。

 

イギリスは80年代終わりからYBAsの登場によってコンテンポラリーアートが

花開いてんけど、90年代はどこ見てもコンセプチュアルアートって感じで正直

ちょっとお腹いっぱいって感じやったわ。

そんな90年代のコンセプチュアルアートのビッグムーブメントの中

ペインティング(絵画)について、ある言葉を聞くようになるねん。

 

「Painting is dead.」 (絵画は終わってるわっていう意味)

 

3D、ビデオ(映像)、デジタルアート、パフォーマンスアートの作品はよく話題に

上るし、その当時はクールなイメージやってんけど、ペインティングになると

上記の言葉で片付けられてしまうなぁとひしひしと感じてたわ。

なんて言うんかなぁ。。。「ペインティングやってます」って言った後

相手と会話が続かへん、または相手が興味がないって感じになんねん。

 

「Painting is dead.」って言われたのは、実は100年以上昔っからやねん。

幾度となく言われ続けてるんよ。

1800年代に簡単に素早くあらゆる場面を切り取れる「写真」が発明されて

今までペインティングで時間をかけて描いていたものが写真で表現できるように

なってしもたあたりから言われてるらしいわ。

そやけど、別に停滞してたわけじゃないねんで。1910年代に現れたコンセプチュアルアートのムーブメントの時だってペインティングが衰退してたわけでもなく

アブストラクト(抽象)、シュールレアリズムからのひねくれた具像、アクションといったペインティングの変化が起こってるしそれなりに躍動してたと思うけど

たびたび「Painting is dead.」が付きまとってたらしいわ。

因みにアブストラクトはピート モンドリアンさんの作品が最初ちゃうかって言われてて、サルバドール ダリさんの作品はシュールレアリズムの代表作って言われてて、ジャクソン ポロックさんの作品はアクションペインティングと言われてんで。

シュールレアリズム (surrealism)っていうのは、おばちゃんの解釈では、押し付けられた価値観とかルールとか慣習とか世の中の常識とされているようなことに異を唱えて自由を求める思想やと思てんねん。

「現実的な思考に対する革命と夢の探求」っていうよーわからんもんやなって

思といて。

ここで「あれ?おばちゃん前にもなんか似たような思想(ism)を言ってたな」って

気づいてくれた人がいたらうれしいわ。

前のブログ「Oak Treeとその後のFountain」に出てきた「ダダイズム」に

なんとな~く似てるでしょ?

シュールレアリズムはダダイズムの次に出てきた思想でダダイズムから発展したものやねん。

 

話を元に戻すわ。

おばちゃんはもちろん、「Painting is dead.」って言われるの好きじゃなし

ペインティングに新たな変化となるような作品を作りたいなぁと思ってたわ。

そんなころ、サーチギャラリーやったと思うんやけどフィオナ レイさん(Fiona Rae)のペインティングを見に行ってん。

1996~7年ごろやったと思うんやけど、そのころの作品が展示されてたのを

覚えてんねん。

彼女は長~い歴史を持ったペインティングという形態の現状に満足せず

現代におけるペインティングのあり方を積極的に再定義した人やと言われてるねん。

「FREEZE」にも参加してはってんけど、その当時はあまり話題になった記憶は

ないわ。

 

ポップカルチャーやデジタルテクノロジーの要素をアブストラクトペインティングと融合させて新たなアブストラクトペインティングの流れを作ったアーティストで、

ポップな世界と視覚的な複雑さを表現している作品が多いで。

コンピューターの画面に依存した世界に焦点を当てて、Photoshopといったツールでのビジュアル手法を取り入れてはってな、現代のグラフィックデザイン的な要素と伝統的なアブストラクトペインティングの技法を統合した新しい視覚表現を作る取り組みをされたはんねん。

彼女の作品はキャンパス地にオイル絵の具またはオイルとアクリル絵の具で、伝統的なペインティングの素材を使ってて変わらへんねんけど、そこに描かれているのが従来のペインティングとは違うねん。

このペインティングのアプローチの仕方ってめっちゃ難いねん。

それを成功させたっていうのが、ほんま、羨ましいくらいすごいなって思うわ。

 

彼女の作品で1996~7年に作成された”Untitled”シリーズがおばちゃん好きやねん。

どれも2m越えの作品やねんけど、今回は“Untitled (emergency room)”を

紹介すんね。

オイルとアクリル絵の具を使った作品で一見すると白と黒が背景となってて

その白と黒がマーブル模様になったり、まだら模様になったり、何かで擦れて

しまってたり引きずられてたりでいろんな形状をしてんねん。

その上に溶けたようなスカイブルー色やいろんな色の円盤みたいのがランダムに

描かれているんやけど、白と黒の背景の上に居るはずのそれら円盤やスカイブルー色の上にその白と黒がかぶさってたり、擦れてたり、雲みたいに覆ってたりしているのを見ると、「なんや、背景ちゃうやん」って気づくねん。

で、この白と黒って一体なんやねん?ってなんねん。

 

Licensed under tate.org.uk

 

とにかく詰め込まれてスペースが無い状態で白と黒が占領していて、それらが形状を変化させながら何かの目的のために動いている過程って感じがするねん。

もとは別の絵でそれがグニャグニャって変化してる途中のように、おばちゃんには

見えんねんな。

 

ペインティングっていうのは、それを見る者との関わり方や解釈の仕方を

明示するんじゃなくて、見る者とペインティングの間の自由な相互作用のうえで

個人的な解釈と感情的な反応を誘うもんやでってなことをインタビューで

彼女は言ってはるねん。

 

この“Untitled (emergency room)”は明確な根拠とか何か確実なことが

あるもんじゃないねんて。

(emergency room)はテレビの病院ドラマとか不安状態を表してるかもしれへんし、まったく別のものを示唆してるかもしれへん。白と黒はターミネーター2のT1000のように形成されて変形しているように見えるやろうから不安定な感覚があると思う。

まるでペインティングを構成する基本的な性質や要素がペインティングの破滅や完全性を損なう可能性も秘めてるようやわってこの作品について自ら述べてはんねん。

 

彼女はペインティングが古臭いとは思ってへんし、ある意味、2年も経てば

持っているテレビも映像も設備や装置も古臭くなるやんって言ったはんねん。

必ずしも自分のアイデアを表現するために選択した形態が重要なんじゃなくて

その形態に何をもたらすかが重要で、常にそれを探求しているとも言ってはるわ。

自分の作品の見られ方について以下のようにインタビューで言ったはって

ものすごく信念の強い人やなっておばちゃんは感じるねん。

「自分の絵が人からどう見られるかは気にしてない。色が気に入ってもらえれば

うれしいし、形や絵の具の表現を気に入ってもらえてもうれしい。ポストモダン的なものについて考えたいのであれば、それはそれでいいと思う。古風で詩的なことを

考えたいのならそれでもいい ― 詩的なことって古臭いと思う?私は思わないけどね。」

 

彼女の作品は以下のウェブサイトで見てな。

Fiona Rae | Site of artist Fiona Rae (fiona-rae.com)

 

因みに、おばちゃんの1番好きなアート作品はギャラリーで作品を展示する前の

空間、ホワイトキューブ(white cube)やねん。

ギャラリーでの展示が終わって作品を全部片づけて、次の展示の準備をする前の

少しの間、ギャラリー内は床のフローリングを除いて真っ白の空間になるんやけど、その真っ白の空間をホワイトキューブって言うねん。

このホワイトキューブに佇んでいる時が1番好きやねん。

これに勝るアート作品はないと思てます。

 

さてと、次はターナープライズについて書こうかな。