劇団四季『ノートルダムの鐘』を

観てきました。



…これは…、


やっぱりスゴすぎた。

良かったよ〜〜〜。



子供の頃に私が読んだのは

『ノートルダムのせむし男』で

非常に暗〜く、陰(いん)の印象が強い。


子ども心にも

安易に触れられないテーマを孕んでいると

恐れにも似た感情を

抱いていたことを思い出します。


また、私の中ではカジモドにしか

焦点を当てていなかったから

思い出すのも苦しい印象しかなかった…


私はそういうものを

エンタメで扱うのが苦手、というか

なんとなく避けてきたところがあって

(エレファントマンなどもそうかも)


でも四季の『鐘』のあまりの評判の良さに

今回はよしっ、観るぞ!と思ったのです。





まずセットが豪華で美しかったよぉ〜

四季って本当に見事で、凄いね。


ストーリーを止めずに

次々と手動で転換させていくセットは

どれも見応えのあるものでした。





カジモドの暮らす塔の上の鐘つき場には

大きな鐘が幾つもあり

思い思いに首を振って音を奏でます。


天井から垂れた紐に飛びついて

ジャンプしながら弾むように全身で

大きな鐘を鳴らす

その光景も躍動感がありダイナミックでした。





カジモド、素晴らしかったです!

体も顔も醜くねじ曲がり、知的問題もあり

耳もあまり聞こえず

上手く話すことも出来ない


そんな現実の自分とは裏腹に

内面の自分は

自由に軽やかに動き周り

伸びやかな美しい声で歌う。


どれほど隠され、虐げられようとも

心までねじ曲がることはなく

清らかで美しいままなんだね…


でも現実に切り替わる瞬間は残酷で

こちらもふと、我に返るような気になる。


カジモドが初めて外の世界へ出て行った時

何もしていないのに怪物扱いされ

捕らえられ

恐ろしい悪意を全身に投げつけられ

心身とも傷だらけになってしまう


自分と変わったものを

受け入れることが出来ない人たち

排除しようとする

立派な教会があってもダメじゃない


子どもの時もすごく辛い場面でした。


でも、知らなかった世界へ

踏み出したお陰で

カジモドは初めて人を愛する喜びを

知ることが出来た


一生のうちで

彼もそういう感情を持てた


例え相手に同じ様に想われることは

夢に過ぎなくても。


それってやっぱり

幸せだったのじゃないかな。


だから、光を見せてくれた彼女に

危機が訪れた時

自分を拒絶し、叩きのめした世間だけど

また勇気を出して飛び込んでいく


その姿、決断には涙が溢れました。



そして子供の頃には分からなかった

フロローの人間としての葛藤。

聖職者として自分の信じる正義、理想像と

それを脅かす人間の本能、欲求。


でも彼だって愛する弟の忘れ形見である

カジモドのことを

1度は投げ捨てようとしたあの日から

そうはせずずっと育ててきたのです。


自分が怪物を育てていることを

世間に恥じる気持ちと、

その残酷な世間から

守ってやらねばと思う気持ち…


憎しみだけじゃない。

きっと愛情もあったのではと思うのです。

人間の心ってそんなに簡単じゃないし

理屈じゃないんだ。



私の記憶の中の(本の)エスメラルダは

もっと寡黙で暗く影のある女性だったけど

劇中の彼女は大輪の花のように華やかで

誰よりも強い存在感を放っていました。


なるほど

何者にも媚びず屈しない気高さと

誰しも魅力されてしまう存在を

表してるのかな。

ダンスが上手で迫力のある

とても素敵なエスメラルダでした。



例のラストシーン。

カジモドが醜い扮装を解き

美しい顔ですっくと立ち上がると同時に


周りの人間は逆に1人、また1人と

全員顔に汚れを塗りたくり

体を傾げた怪物と成り代わる


どちらが人間で、どちらが怪物なのか…


もう、うわぁーーーっ!!…でした。



他にも火あぶりの刑を執行する場面や

フロローが落ちる様子

上から熱い鉛が流れ落ちるところなど

演出がさすがで、こうくるか!でした。


力強いクワイヤ(聖歌隊)の存在も

素晴らしかったです!



カジモドについて考えることは

もういっぱいあって…

だけど何が正しかったのか分からない


カジモドは、何の象徴なのだろう

フロローには? エスメラルダには?


これは語り尽くせないよ

凄い話を劇にしたものだなぁ〜

児童書でなく小説が読みたくなりました。






カーテンコールは何回あったかなぁ〜笑

6回?7回?


でも回を重ねるうちにキャストの皆さん

役から徐々に戻ってきたかのように

笑顔が増えていったみたいだった。

それ程役を生きているのかな。


やがてスタオベの客席からは

ブラボー代わりの指笛が飛び交いました。


名残を惜しむように

熱い拍手(と心の喝采)が続きました。