著者: 舞城 王太郎
タイトル: 煙か土か食い物

 

舞城王太郎のデビュー作の文庫本。

芥川賞候補で、覆面作家と華々しい作家の本である。

まず、題名がすごい。「煙か土か食い物」だ。主人公サンディエゴのER外科医奈津川四郎の祖母龍子が直腸癌になり、苦しくなって、「人間は虚しい。どんなに偉くなっても、お金儲けても、所詮人間は死ねば、煙か土か食い物になる。」と言ってします。火葬か土葬か獣の食い物か。そんな言葉を吐かせてしまう作者は、断固として妥協をしない。奈津川家の家庭内の暴力の激しさは、壮絶だ。四郎の父丸雄が、自分の次男(四郎の兄)の二郎への暴力は、加減なき激しさだ。その影響で、学校でいじめられいた二郎は、当然同級生はおろか上級生までも徹底的に叩きのめす。そして、不良グルーフのリーダーとなっていく。その過程は、読むのが辛くなるほどのバイオレンスだ。

 

さて、主婦生き埋め事件に四郎の母が巻き込まれる。それがきっかけで、日本に戻ることになる四郎。四郎の周りには、個性豊かな登場人物が次々と登場する。父丸雄は国会議員、兄一郎も政治家。二郎は、父の暴力で三角蔵に入れられて消えてしまう。三郎は、しがない推理小説家。兄嫁との不倫関係。

友達の面々も、すごい。ルパン、その不倫相手のウサギちゃん、マリク、白碑など。

 

パズル、言葉遊び、動物占い、暗号など、めまぐるししい。そして中に家庭内暴力、父の子に対する暴力=虐待、父の愛、母の愛、家族愛が入ってくるし、霊体験や犯罪者の心理なんてものまで盛り込まれている。まあ、博学なんだろうね。舞城さんは・・

 

で、内容は、一体どうだったんだろうか。結構、時間をかけて読んだ。なかなか先に進めなかった。文章のリズムは、個性的でいいんだが、パズルのような暗号解きと犯人の意外さ(かなり唐突だったなあ)に少しだが疲れた。舞城さんへの評価は、もう1冊読んでみたからでも遅くはないだろう。でも、読むときは少し覚悟がいりそうだ。