
著者: 沢木 耕太郎
タイトル: 無名
ノンフィクション作家沢木耕太郎は、「父の死」をどう受け止めていったかを描いた作品。肉親の死、特に沢木にとっては、父は特別な存在であったようだ。父は、無名のまま、天寿を全うしていく。沢木は、本当はもっと父についていろいろを知りたかったのだろう。ただ、W杯サッカーの取材など仕事に追われて、いつのまにか時は過ぎていき、父は、過去を語ることが出来なくなってしまった。沢木の人生の節目で父がどう感じていたのだろうか。残された時間が少なくなった父と過ごすとともに、かつて父が趣味でしていた俳句を通して、父の心情に少しでも迫ろうとしている。そこから、沢木人生、沢木と父の絆が浮かび上がってくる。
沢木とは、「敗れざるもの」を読んで以来のファンである。かならずしも、その人の能力からすれば、日の目を見なかっただろうと思われる人に対して、独自の視点から見つめるノンフィクションに触れることは、読者として幸せを感じる一瞬かもしれない。
「深夜特急」は、単庫本、文庫本とも持って、繰り返して読んだ「旅のバイブル」的な本だろう。いや、旅を人生を読み替えた方がいいのかもしれない。この本で、そういう感じを一層強くした。