「ここにいたのね。なかなか帰って来ないから心配したのよ。」馴れ馴れしい声が聞こえる。
振り返るとやはりキャサリンだった。また来たのか。お節介焼きめ。今にも言葉に出そうだった。
「帰るって言ったって、あなたの家は私の家じゃないでしょ。」真っ直ぐと海を見つめたまま冷たく言い放った。
「何言ってんのよ!あそこはあんたの家よ」キャサリンは笑いながら優しく私の肩に手を添えた。その手を振り払い、立ち上がった。
「第1あなた私の親でもないのにお節介焼きすぎ。めんどくさいし、うざったい。何がしたいの?お金でも巻き上げるつもり?」
私はまだ海を真っ直ぐに見つめたままだった。
「体調でも悪いの?いきなり拗ねちゃって!ほらここにいたって何もならないでしょ。帰るわよ」力強く引っ張られた腕。気を抜いたら引き摺られそうなほどの力。本当に癌で死ぬのかすらわからないほどの力。
「やめてよ!」必死に手を振り払った。
「あんたは私のなんなの?つい昨日会ったばかりなのになんでそんなになんでも知ってるような言い草する訳?お節介焼きにもほどがある。もう関わらないでよ。あんたに束縛されるなんてごめんなの。」
行く当てなんかないのにキャサリンがいるのと反対の方向へ進んだ。
「どこ行くのよ!」キャサリンの声が響く。
行く先なんかなかった。
けれど大人ぶる為に、一匹狼を演じた。
本当なら今すぐキャサリンの胸に飛び込みたい。ごめんなさいと謝り、家に帰り、キャサリンとキャサリンの作った食事で食卓を囲みたい。
でもそれじゃあ大人になれない。
だから。
延々と続く砂浜を見つめながらずっと歩いた。
キャサリンが自分を呼ぶ声がする。
でも振り返らずただ歩いた。
例えずっと先に見える砂浜が
涙で揺らいでいたとしても。