今年になって6月に大腸ポリープがみつかり切除、そして8月になって細菌性の急性膀胱炎(実はあとで“細菌性の前立腺炎”の誤診だった可能性が高いことがわかる)にかかってしまった。年をとると、ある年代からこうも急に様々な病気が表面化してくるものだと思う。今回はこのうち後者の前立腺炎の治療において、病院を選ぶとき、事前に口コミ情報をよく読むことがいかに大切かを痛切に感じたので紹介したい。

 

7月下旬になって尿が出にくいのと、排尿時に痛みを感じるようになってきた。そして、駅前の交通が便利な泌尿器科のクリニックを受診した。さっそく尿検査と血液検査が行われ、検査が終わると1時間ほどして、開業医の高齢の医者に呼ばれて説明を受けた。医者は、私と目を一度も合わせることなくパソコンの画面をみながら、ただ淡々と「細菌性の膀胱炎、前立腺肥大、そして前立腺癌の可能性があります。」とだけ説明した。PSAの値が高かった(8.0)ことが前立腺癌の可能性を示唆していた。それ以外の説明は全くない。私は生まれて初めて耳にする「癌」に衝撃を受け頭を抱えてしまった。そして私は1つだけ医者に質問した。「膀胱炎や前立腺肥大とPSAの値が高いこととは何か関係がないですか?」これに対して医者は語気をやや強くして「ないです!」とだけ言った。しばらくすると医者は早く出ていけといわんばかりに検査結果が記入された用紙を私に渡した。このぶっきらぼうな対応に医者に対する信頼は根底から覆ってしまったことはいうまでもない。

 

帰宅してからさっそく前立腺癌やPSA検査について徹底的に調べた。すると、PSAの値が前立腺炎や前立腺肥大によっても一時的に高くなることは、医者であれば常識であることがわかったのである。とすると、医者のあの「ないです!」は何だったのか?聞き間違いだったのか?今でもわからない。さらにやや専門的になるが検査結果のF/T比(0.6)も前立腺癌の可能性が低いことを示唆していた。そうであるなら、医者の姿勢として、安易に「前立腺の可能性があります」などと、何らの説明もなく唐突に言うのは、患者の心情を無視したあまりに無神経な態度であった。

 

その後の2回の通院において抗生剤の投与により細菌性の膀胱炎は治癒した。そして2か月後に再度PSAの検査を行い、ここでPSAの値が相変わらず基準値を越えている場合は、そのときにはじめて「前立腺癌の可能性あり」と診断され、次は成検により前立腺の組織を採取して確認することになる。底知れない不安の中で二か月も生活するのは耐えられない。私は医者に悩みを吐露した。すると医者は「前立腺癌で死ぬことはないですよ!」とだけ答えた。相変わらずぶっきらぼうである。癌になると、つらい治療で大変な思いをするだろう。それに対する思いやりは全く感じられない。心ある医者なら、「PSAの値は前立腺肥大等によっても一時的に高くなることがあるので、今はそれほど心配しないでください」と易しく慰めてくれたと思う。私はこの医者に何か恐怖心のようなものを感じるようになってきた。

 

ここで私は初めてこのクリニックの口コミ情報を調べた。遅すぎた。調べてみると、さすがに私が感じたのと同様の悪評が多い。総合点数も個人のクリニックとしては最下位に近い。要は、説明不足と、ぶっきらぼうで患者に寄り添う姿勢がないということで悪評は概ね一致している。そして、私はついに転院を決意した。

 

転院したのは少し遠いが、口コミ情報によるとたいへん評判のよいクリニックだった。PSAの再検査が終わると、医者は懇切丁寧に説明してくれた。前のクリニックの医者の対応とあまりに違う。結果は、「前立腺肥大の所見なし」、「PSAも正常で前立腺癌の疑いなし」だった。医者によると前のクリニックで診断された「膀胱炎は誤り」で「前立腺炎」だったのだろうということだった。そのことは、前立腺肥大が治癒していたことからも裏付けられた。つまり前のクリニックによる検査結果で前立腺が肥大していたのは前立腺炎のためだったのである。膀胱炎によって前立腺が肥大することは考えられないからである。そして前立腺炎が治ることによって前立腺の腫れもなくなったものと考えられる。前のクリニックの医者は単に患者を苦しめることに快感を感じていたとしか思えない。ちなみにこの医者は、私大の医学部を卒業したのち海外留学までし、その後某私立医科大の教授を勤めていたらしい。恐れ多いことである。エリートかもしれないが、医者に欠かせない判断力も人間性も欠落している。

 

このPSA再検査までの底知れない苦しみや不安はいったい何だったのか?医者の対応次第ではこれほど悩まなくてよかったはずである。今回は改めて病院や医者を選ぶことの大切さを痛感した次第です。その有力な情報が「口コミ情報」なのです。

 

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おわりに趣味のクロマチックハーモニカでショパンの「別れの曲」を演奏したのでよかったらお聴きください。60代後半になって練習を始めて今年で6年目になります。音楽の演奏がどれほど老後の安らぎになるか、いずれブログで紹介したいと思います。