前に書いた「20時15分のポッピングシャワー 」の続編です。
前回のを読んでいただいてから、こちらに来ていただくと
話がよりわかりやすいかと。
今回も、アラは大目に見てください・・・。
そしてそして、画像と内容とは一切関係ありません。はい。
誰もいない、小さな公園の小さな展望台。
今のこの季節にだけ咲く花が風に揺れている。
いつかまた、二人で来たい。ずっとそう思っていた場所。
願いは、叶った。
少し離れたところに立って、今、同じように景色を見ている彼。
でもここはこれから「彼と最後に会った場所」になる。
もう二度と彼には会わない。
ここにくるまでに、そう決めていた。
帰ってきたのを知ったのは、人伝てだった。
いつもは、帰るフライトの時間を知らせてくれてたのに。
私に直接、連絡をくれたのは、一週間近く経ってからだった。
空港であんなことがあったからって、勝手に彼女気取りでいた。
そんな自分がおかしくて、たまらなく悲しかった。
離れている間もそうだった。
「おめでとう、あの、」
「ありがとう!ごめん、今から取材入ってて」
「あのね、今度、」
「その日、撮影と打ち合わせで。ごめん」
ちゃんと向き合って話ができたのはいつだった?
寂しい時にそばにいてくれるひと。
会いたい時に会えるひと。
今度好きになるなら、そんなひとにしよう。
私は、あなたを困らせる存在でしかない。
最後の場所がここで、展望台でよかった。
景色を見ていればよかったから。
大好きなあなたを、これ以上見ないですむから。
私の様子がいつもと違うことを察して、彼は何も言わずにただ遠くを見ていた。
深呼吸して、切り出した。
「あのね、私、もう、」
「怒ってるんだろ。帰るの連絡しなかったこと」
言葉をさえぎられて、思わず彼のほうを見る。
彼は前を向いたままだ。
「丸一日、スケジュール空く日がわかってから連絡しようと思ってたんだ。
ちゃんと話をしたかったから」
そうして私に真っすぐ視線を向ける。
「言ったろ?運転手じゃないって」
目が合ったまま動けない。鼓動の音が急に大きく感じた。
身体のあちこちに、心臓があるみたい。
「あの時ちゃんと言えなかったから。好きだって」
背中を包まれるように、後ろから抱きしめられていた。
「寂しい思いさせてごめん」
張りつめていた気持ちが、ゆっくりゆっくり、溶けていった。
目の前の景色がにじんで、ぼやけて。
首を横に振るのが精一杯だった。
そうだ、このひとはいつもそうだった。
どこまでも優しかった。
「・・・・泣いてるだろ」
真後ろから彼の声がする。
「泣いてない」
鼻をすすりながら答える。
「ほらやっぱり泣いてる」
「泣いてないってば」
振り向いてにらみつけてやりたいのに、しっかり抱きすくめられて身動きできない。
「あの花」
「えっ」
「前に二人で来た時も咲いてたよな」
覚えてたの?
「告白するならここがいいなって思ってた」
悪びれずに言う。なんてひとだろう。
とくんとくんとくん・・・・。
背中から伝わる彼の鼓動をいつまでも聞いていたい。
風に乗って、緑の香りが漂ってくる。
私の後ろ髪に、鼻先を潜りこませて彼が言った。
「キスしてもいい?」
右耳のピアスが揺れて、しゃらんと小さく鳴った。
頬も耳もカッと熱くなる。
「だめ」
思わず言った。
まだ空は明るい。泣いてた顔を見られたくない。
「どうしても?」
「どうしても」
「・・・・・・知らねぇ」
そう言うと彼は私の両肩を持って、無理やり自分の方へ向けさせた。
おでこ同士、こつんとくっつけて。それから、唇どうし。
あの時と同じ。
あったかくて、優しい・・・・・・。
また、まぶたで光がはじけたような気がした。
彼の背中に両手を回して、きゅっと音がしそうなくらい抱きしめる。
私も知らない。
こんなにいとおしい人、ほかに知らない。
(画像お借りしました)
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