２０２３年４月１７日。 母、８２回目の誕生日を迎えました。７５歳で、アルツハイマー型認知症と診断され、要介護１で、デイサービスを週３回利用し始めました。それから、５年間、デイサービスの利用の日は増えましたが、独り暮らしを続けてくれました。２０２２年８月、ショートステイ先で、コロナに感染し、そのまま自宅療養、私が泊まり込みで看病。これを機に、母の家に私が住むことにしました。母、８１歳の夏でした。今思えば、７７歳頃が一番大変で、孫に暴言を吐くこともありました、今は、もう、その山は越えました。覚えていたり、忘れていたりする時が一番ややこしかったです。７９歳で、初の迷子。８１歳で、交番に連行事件。夜の徘徊スタート。「あんた誰？」も、とうとう始まってしまいました。現在要介護２。デイサービスとショートステイをフルに活用し、生活しています。
学校では、『親は歳をとるんですよ。歳をとったら、こんなことが起こりますよ』など、一切教えてもらわなかったなと思いながら、母との生活をこちらに綴ることにより、誰かの何かのお役に立てればなと、ここから見える景色を日々発信しています。
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義母は、７月７日に入院し、８月の中頃には、もう、人工呼吸器をつけるほどになってしまいました。
７月のうちは、ベッドに座ってお見舞いでいただいた果物を、パクパク食べていたのに・・・。
人工呼吸器をつける時、もう、意識を遮断するので、会話が出来なくなりますといわれました。
義母はもう、ベッドの上で溺れているような状態でした。呼吸が出来ないのです。酸素を取り込めない状態。
最後にかけた言葉は
「お義母さん。しんどいんか？楽にしてもらうからな」
そう言うと、義母は、大きく縦に首を動かしました。
そういうことも、義母に言うのは、私でした。
もう、義母と目が合うこともありませんでした。
本当に苦しかったと思います。
それから、数日後、義母は危篤状態になりました。
義母の手をさすることしかできませんでした。義母の爪は茶色く分厚くなっていました。これは、私が出会ったころからでした。その手をさすると、変なにおいがしました。
その匂いは、病気になったからではなく、たぶん、ずっと前から、爪が茶色くなっていた頃から、そうだったのだろうと思います。
この時、義母、５３歳。今の私と同じ年齢です。
私の手の爪は、ネイルなどはしていませんが、もし、茶色く変色し分厚くなってきたとしたら、何らかの手立てをすると、思うんです。義母は、この爪になってから、どれだけの月日が流れたんだろうと思いました。働き者の手でした。手や爪のお手入れなんて、したことなかったんでしょうか。
「お義母さん・・・手、くさいで・・・・」
心の中で、つぶやいたのを覚えています。
酸素を最大限にしても、もうお義母さんの酸素濃度は上がりませんでした。
もうすぐ、命の火が消えそうでした。
病室から出ると、主治医がガムを噛みながら、書類の整理をしているのが見えました。
私が住む世界と、この人の住む世界は確実に違いました。
何人も、見送ってきた医者は、命が消える瞬間が近づいている患者なんて、珍しくも悲しくもなんともないんですね。家族が見てしまうような場で、ガムをかまなくてもいいのになと思いました。
主治医として、もっと出来ることがあったんじゃないかと悩んでいる様子は微塵もありませんでした。当時、セカンドオピニオンを申し出ると、「なぜですか？」と怪訝な顔をした医者でした。２０年前は、まだそういうことは一般的ではなかったですが、「なぜですか？」と言った時点で病院を変えるべきだったと思いました。
義母の命の火が消えようとしていた頃、なぜか義父は、病室を離れました。病室と言うより、病院から出て行ったようでした。意味が分かりませんでした。
息子もいない。
義母の心臓は、私が一人で付き添っている時に、止まりました。
もう、危ないというときに、一体、どこへ行ったんでしょうか？
義父が廊下の先に見えたとき、「お義父さん！！早く！！！」と、大声を上げたのを覚えています。
義母は、５３年の生涯をおえました。
１９９９年８月２３日 今から２４年前の今日の日の出来事です。
亡くなった後、あの、ガムを噛んでいた主治医が、義父に、解剖しますか？と尋ねたら、義父は、「そんなことしたら、嫁が怒りますから」と、断ったそうです。
私、義母がなぜ、命を落とさなければならなかったのか、知りたかったです。解剖反対ではなかったです。なのに、わたしのせいにして、義父は断りました。
なんやねん。と思いました。自分と言うものがないのか！！と言いたかった。
義母は最期に、私が縫ったピンクの浴衣を着せてもらって、自宅に戻りました。
つづく。
