2022年4月17日81歳になった母。75歳頃から、母の頭の中に消しゴムが生まれ、少しずつ少しずつ、母の記憶を消していく。
例えるなら、床を自由に動き回り、掃除してくれるロボット。あれ、なんて言ったっけ(笑)
こっちが頼んでもいないのに、あちこち動き回って、母の記憶を消しまわっている。
ずっとデイサービスとショートステイを利用しながら、独り暮らしをしてくれていたけれど、2022年夏、予定外に3週間のショートステイを利用することになり、久しぶりに迎えに行くと母は激変した姿で戻ってきた。
母の認知の状態は、著しく低下しており、寝て起きると、もう、わたしのことを忘れるようになりました。
もっともっと、歳を重ね、もっともっと弱ってから、私のことを忘れると思っていけれど、そうじゃなかった。
学校では、『親は歳をとるんですよ。歳をとったら、こんなことが起こりますよ』など、一切教えてもらわなかったなと思いながら、初めて遭遇している、親が歳をとるということをありのまま、お伝えすることで、誰かの、何かのお役に立てればと、このブログを更新しています。
時々、旅日記なども書いております。これは、自分の備忘録ですね。誰かの役に立つとは思えませんので。
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また、旅日記に戻りますね。
前回までの旅日記はこちら。
素敵なアンティークショップを後にして、そして、次に向かったのは、初めて訪れる場所。出光美術館でした。
門司港に出光美術館があったことなど、今まで知らず、今回は、この美術館の案内掲示板がやたら目につき、どこだろ?行ってみようかな?と思い、時間があったら行こうと考えていましたところ、母が、ホテルで休憩しなかったので、行けました。母が元気なおかげです。
門司港周辺といってもいいほどの距離にそれはありました。
このポスターに惹かれて訪れたんですが、もう、ほんと驚くほど美しい陶器たちでした。
私は、もともと陶器が好きで、古民家自宅ショップをしていた時も、陶器をおいておりました。古民家リノベーションの時に私の大好きな作家さんと、出会ったお話も、まあこれも不思議なめぐりあわせで出会わせていただいて、この話もすると、長くなるので、戻ります(笑)
今までに色んな美術館に行きました。大山崎にある、アサヒビール美術館もモネの絵があって建物も素敵でね。大好きです。紅葉の時期に行ったとき、紅葉の葉が散り風に舞って渦が出来、この世の物とは思えない美しさでした。
あっまた、話がそれた(笑)
この出光美術館は、出光さんの個人の所有の陶器を今回展示しているということで、板谷波山さんの陶器のコレクションを見せてくれているという形。
大きな一つのお部屋に、数々の陶器が並べられておりまして、外側にぐるっと展示してあるものと、中央に展示してあるものがありました。中央には、腰かけられるようにソファがいくつか置かれていました。
私は、母と、「すごいなあ。こんなに私の好きな色ばかりの陶器見たことないわ~」とほんとに感動して、みていました。好きなのがあるというレベルではなく、これもこれも、全部好き!という、もう、私の心にビンゴの陶器たちなのです。
あ~~私、この色が好きなんだなぁ。好きな色やねんなぁ。
お部屋の中は撮影できないので、ほんとに残念なのですが、これは、竈の神様もきっと喜ぶはず、今から新幹線に乗って、ここに来れないかな?と考えたほど。
実は、展示は、あと二日で終わり、その後、東京の自宅の倉庫かどこかに入ってしまうらしく、また、展示されるかどうかは未定だというのです。
今、こうして目にできたというのは奇跡に近いじゃないですか!!
私は、いろいろと感動しながら、見ていました。
母も一通りは見たんです。そして、「ここに座っとくわ」とソファに腰かけたので、私は、「もう一周見てくるわ」と言って、また、初めから見だしました。陶器を見ながら、母の様子をチラチラとみていました。(母は、今、ここに来た事、自分も見たことも忘れるだろうから、気のすむまで、何周もまわってみちゃおっと)そう思っていました。
そして、一周し、また、もう一周と見始めた時、「あんた、もう、一周まわったで!」
えええええ!!!!
それ、覚えてるん???
私が、一周まわり終えるのを、ずっと意識できたということですか??
信じられませんでした。
こういう時は、忘れてくれていいんですよ。お母さん。
そう思いながら、「まだ、こっち側見てないしちょっと待ってて」私も負けずに引き延ばし、それでも、もっとゆっくり見たかったのに、と思いながら、美術館を後にしました。
あ~~でも、なんて素敵な色だったのでしょう。
美術館から出ると、すっかり外は、夕暮れの色になっていました。
蔦の葉っぱのグラデーションもとても素敵。
思いがけず、美術館に立ち寄り、私の人生で一番と言っていいほどの、心にビンゴの色に出会えました。門司港で一日ゆっくり過ごすというプランを入れていたからこその出会い、よくぞでかした私。
昨夜の事件が帳消しになるほどの感動でした。でも、また今夜もホテルに泊まるのです(笑)
つづく。
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