フジテレビは当事者ではなく、あくまで第三者であることから示談書の効力も及ばない。
したがって、フジテレビは各当事者から聴取した内容などに基づいて、性被害事実を把握・認識していることから、被害者以外の第三者としての立場で、中居正広を刑事告発することができる(刑事訴訟法239条1項)。
ここで渡辺渚が刑事告訴しない場合にフジテレビが刑事告発できるか問題となるが、結論から言えば、この場合であっても刑事告発ができる。
性加害について2017年以前は親告罪(致傷の場合は非親告罪)だったが、2017年の刑法改正により非親告罪に変更された。したがって、被害者自身が刑事告訴していない場合であっても、非親告罪として刑事告発することができる。
報告書によると、事件が発生したのは2023年6月。現行の不同意性交罪(刑法177条)が適用されるのは、2023年7月13日以降なので、それ以前の改正前刑法177条の強制性交等罪の適用が問題となる。
事件当日の具体的な内容は明らかになっていないが、もし暴行・脅迫の事実が認められるということであれば、強制性交等罪に該当する可能性がある(5年以上の懲役)。
ここで渡辺渚が事件の影響でPTSDとなり、相当期間入院を余儀なくされたところ、これが一時的な精神的苦痛やストレスではなく精神疾患の一種であるPTSDと認められれば、刑法上の傷害に該当する(最高裁平成24年7月24日決定)。
そのため、性被害とPTSDとの間に因果関係が認められれば、強制性交等致傷罪(旧強姦致傷罪)の適用も考えられる(無期または6年以上の懲役)。
性被害とPTSDとの間に因果関係が認められることが「鍵」なのだ。
捜査機関が捜査をおこなった場合、中居正広逮捕の可能性は否定できない。