こうしたことをふまえて第四章以降において、人間を発達的に考察しました。
青年期以前において、前個人的存在である子どもは、両親の世話などによる安定感、両親のしつけなどによる方向づけが与えられているという、第一次的絆のもとに生きていて、青年期になって自我に目覚めた時に、今度は人間は個性的存在として、自分の人生に方向と安定を見出さねばならないのです。しかしながら、第二章でのべた人間の特性である思考が自覚などを生み、人間はその自覚によって生み出された実存的二分性のもとにある。人間はこの実存的二分性により不安と無力の感情を引き起こされ、人間は、これらの感情を回避しようとして個性をなげすて、その時の文化・社会などに適応してよいかどうか吟味することなく、適応して生きていくようになる権威主義の過程と、これらの感情に耐えて個性をなげすてることなく生きていく自己実現の過程との二つの生き方にわかれる。権威主義の過程はさらに積極的権威主義と退行的権威主義との二つの生き方にわかれ、自己実現の過程は自己実現人間になる可能性と神経症になる可能性があるのです。