第六章 神経症
谷口の「疎外からの自由」によれば、フロムの考えは次のようである。
自己実現への過程は、神経症になる可能性もあるのです。人間が生産的に生き続けていく過程において、さまざまな文化的規範やまた社会的なさまざまの不合理の権威との戦いを経験する。そしてもし人間がその戦いに敗れると神経症をひきおこす結果になるのです。もちろん、神経症にはコンプレックスにもとづく症状もあるし、人間関係のゆがみにもとづく症状もあるし、性格的な疾患にもとづく症状もある。しかしあらゆる場合において神経症の根本の原因は、人間が生産的に生きることに失敗したことにあるのです。
ここで神経症の人と権威主義者とを比較するならば、生産的にいきることから逃避して権威主義者となっている者達よりも、生産的に生きようとしている神経症の人の方がより人間的であるといえるのです。