ⅲ退行的権威主義

 退行的権威主義というのは、職業においても楽しく、余暇においても楽しく生きていくという、積極的に生きることをやめ、人生から退行した生き方のことなのです。彼らは仲間をつくり、余暇において趣味などを楽しむことに自分の人生を方向づけ、そうすることによって自分の人生に意味を与えようとしている。彼らもまた、生産的に生きていないので、自分に対して自信がなく、仲間から認めてもらうことによって安定を得ようとしているのです。

 彼らは自分が不安で無力であることに漠然と気づいてはいるが、その事実に直面し、克服する力など自分にはないと思い込んでいるので、仲間の中に紛れ込むことによってそれらの感情から逃避しようとしているのです。彼らは自分の運命を切り開くことなどできないし、世の中など、いくらがんばってみてもなるようにしかならないと思い込んでいる。だから楽しく生きていければよいという退行した人生観をもつようになるのです。