また、もう一つの実存的二分性はこうです。人間は孤独であると同時にかかわりあって生きている。彼は独自の存在であるために、すなわち、他の誰とも同じでなく、離れ離れの存在であるところの自己を知っているために孤独なのです。また、行動を通して外の世界を経験していくと共に外界からも分離し、孤独となっていく人間は、たった独りで、圧倒的で強力な外界と直面しなければならないのです。このことが人間に無力と不安の感情を生みだし、人間の孤独に、いいかえれば人間仲間とかかわりあいをもたずにいることに堪えられなくなるのです。 

 さらにフロムは、生と死の実存的二分性に関連した、もう一つ別の二分性について述べていますが、それについては第五章の自己実現の過程の中でふれたいと思います。