子どもが他人をそれと認め、ほほえんで応えることができるまでには、生後数ヶ月かかり、また外界と自分とを混同しなくなるまで数年かかります。それまでは子どもは、典型的な自己中心主義を示す。このころの子どもは、相手の立場を理解したり、自分の欲求をコントロールすることができないのです。しかし、この自己中心主義は他人に対する優しさや、他人に対する関心と相容れないものではないのです。なぜならば、このころの子どもには「他人」がまだ、実際に自分から離れたものとしてはっきりと経験されてはいないからなのです。これと同じ理由から、子どもが権威によりすがることも、最初の数年間においては、後になってから権威にすがるのとは違った意味をもっています。両親などの権威者は、この最初の数年間においては、まだ根本的に分離した存在とは考えられていないのです。