次に、子どもの価値判断に関して述べるならば、それは両親の褒めたり罰したりする行為(しつけ)などによって形成されていくのです。これは、子どもが完全に両親の配慮と愛とに依存して生活しているので、当然といえるでしょう。そして、両親だけでなく、教師や警官など子どもを支配する権威の位置にあるものはだれでも、子どもの価値判断の形成の役目を果たしているといえます。しかしながら、おとなたちの励ましと承認によって維持されている行動が、おとなたちの存在しない状況や、おとなたちから逆の作用をうける場合でも、なおも強固に維持されていくという自律の現象もあることを忘れてはなりません。この点に関しては、今後の研究にまたなければなりませんが。

 とにかくここには、両親の世話などによる安定感、両親のしつけなどによる方向づけが与えられているのです。フロムは、子どもの前個人的存在の時のこうした絆を第一次的絆と名づけています。