ⅱ二重の世界
人間が本来関係のなかにあることを、ブーバーは関係のア・プリオリ(先験性)と述べています。ブーバーによれば、人間は世界に対して二つの根源的な態度をとる。一つは、利用するために働きかけていく態度であり、もう一つは、語りかけていく態度なのです。ブーバーは前者の態度をわれーそれ、後者の態度をわれーなんじと呼び、その二つの根源的な態度にもとづいた世界をそれぞれ、それの世界、なんじの世界と名づけています。私は、さらに、それの世界を非生産的世界、なんじの世界を生産的世界と呼びたいと思います。そして人間は、たえずどちらかの態度で世界に対し、その態度にもとづいたどちらかの世界に、たえず生きているのです。ただ違っているのは一人の人間において、非生産的世界が優勢か、生産的世界が優勢かだけなのです。