谷口・早坂・佐藤の「人間存在の心理学」によれば、ビンスワンガーの考えは次のようです。
人間はだれでも、ものとかかわりつつ、他のひとびととかかわりつつ、そして同時に自己自身とかかわりつつ存在している。だから、人間の実存の世界は、それが指し示すアスペクトの違いから、「事物世界」(Umwelt)、「共同世界」(Mitwelt)、「自己世界」(Eigenwelt)、の三つにわけられる。しかし、わけられるといっても、本来世界なるものは、個々ばらばらに切りはなされて存するものではなく、つねに統合された一つの全体的な連関性として存するのです。実存の世界を簡単に説明するならば、「事物世界」とは、自然的なあるいは人工的な事物(モノ)の世界であり、「共同世界」とは、他人とともにある世界であり、「自己世界」とは、主体たるわたしが、自己自身の内奥とかかわる内的世界のことなのです。